第14話 ダンジョン産防具(2)

 翌日、購入したレザーアーマーとレザーブーツを装備し、ダンジョン入り口の前に立って確認を行う。

 どうやらあの店員が言っていたことは事実のようで、装備している箇所だけでなく全身が何か膜のようなもので守られている感覚がある。

 そのことに安心し、ダンジョンへと足を踏み出す。嘘を教えることはないだろうと思いつつも少し不安だったのだ。



 1日ぶりのダンジョンには相変わらずモンスターが少なかった。レザーアーマーとレザーブーツを装備した効果をすぐに確認したかったのだが、なかなか思うようにはいかないようだ。

 まあ、部屋に突っ込めばモンスターには会えるのだろうが、さすがに確認もなしに突っ込むのはありえない。前回の経験を全く顧みないとか馬鹿のやることだろう。

 そんなことを考えながら通路を進んでいると因縁の十字路まで来てしまっていた。しかも通路の先にはグリーンスライムがいる。


 慎重に左右の通路を確認する。どうやら今回はモンスターが潜んでいることはないようだ。

 そうと分かればこのグリーンスライムには装備の効果を確認するための実験台になってもらおう。

 そう決めて前方のグリーンスライムへと駆け出し、大ぶりの攻撃を仕掛ける。

 俺の駆ける音に気付いたグリーンスライムがこちらを振り向き、横に転がってバットを避ける。

 予定通り攻撃を避けられると、そのままの体勢でグリーンスライムからの攻撃を待つ。

 期待通り、無防備にさらけ出した俺の腹めがけてグリーンスライムが体当たりを仕掛けてきた。


「……」


 あれ?今攻撃を受けたよな?

 あまりの衝撃のなさにステータスのHPを確認する。するとわずかにHPが減っていた。どうやらグリーンスライムの攻撃が外れたわけではないようだ。

 というか、攻撃の衝撃をほとんど感じないのにHPは減るのか。ダンジョン産の防具で防御力が上がるのは良いが、雑魚モンスターの攻撃で気付かずにHPがなくなっているとかないよな。

 ……心配だから、これからは常にHPを意識しておこう。

 ダンジョン産の防具の期待以上の防御力に驚きつつ、尚もこちらに攻撃を仕掛けてくるグリーンスライムの体当たりをバットで受け止める。

 一度確認することを整理したかったので、すぐそばに落ちたグリーンスライムは倒してしまうことにした。



 その後、ダンジョンの通路を歩きまわり、グリーンスライム2体に対して確認を行った。

 腕や足、頭などの各部位で無防備に攻撃を受けたときと腕でガードしたときの違いを確認したり、同じガードでもバットで受けとめたときや足で蹴りを合わせたときにHPの減り方に差が出るのかなど、色々と試してみた。


 結果、各部位で無防備に攻撃を受けた場合はHPが減少し、腕でガードしたり、バットで受けた場合、足で蹴りを合わせた場合にはHPが減少しなかった。

 このことから、防御行動をとっている場合はダメージを防げるのではないかと推測している。まあ、蹴りを合わせるのを防御行動とするかは微妙なところだが。


 ただ、前回はバットで受け止めた場合にもHPが減少していた。これに関しては、単純に防御力が低かったためにダメージが防ぎきれなかったのだと思っている。

 つまり、こちらの防御力を上回る攻撃を受けると防御してもダメージを受けるということだ。

 当たり前のことだとは思うが、今後スライムよりも強いモンスターとも遭遇するだろうし、きちんと意識しておかなければいけないだろう。


 また、各部位で無防備に攻撃を受けたときのHPの減少量は部位によらず全て同じだった。なので、店で聞いた装備品の防御力の合計がその人の防御力になるという話は事実だったようだ。

 正直、レザーアーマーで守られた場所とそれ以外でダメージに差が出ないのは謎でしかないが、これもダンジョンのシステムとして受け入れるべきなのだろう。


 しかし、そうであれば探索者にはダンジョン産の防具を装備することを義務付けるくらいのことをしてもいいのではないだろうか?そうしていれば俺もグリーンスライムに殺されかけるなんてこともなかっただろうに。

 いや、結局は同じことか。ダンジョン産の防具を装備していても適正レベルを超える階層に踏み込めば同じだ。であれば、まだ低階層で気付ける方が安全なのだろう。まあ、ダンジョン管理機構がそこまで考えているのかは分からないが。


 グリーンスライムを相手にしたダンジョン産の防具の確認結果についてそんな風に振り返りつつ、ダンジョンを後にした。

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