第13話 ダンジョン産防具(1)

 翌日、隣町にあるダンジョン管理機構のアイテムショップへと出かけることにした。当然、ダンジョン産の防具を手に入れるためだ。

 店に入ると前回と同じように大きな鎧と大剣に迎えられる。前回はあまり買うつもりがなかったので気にしていなかったが、これも売り物なのだろうか?

 大きな鎧と大剣を横目に防具売り場へと移動する。防具売り場は壁に沿って鎧がいくつも並べられ、反対側の棚にはガントレットやブーツなどの防具が展示されていた。

 通路を歩きながら鎧を確認していく。しかし、展示されているのは全て金属鎧だった。それを見て、前回来たときにレザーアーマーは取り寄せになると聞いたことを思い出した。

 金属鎧で動き回るのは厳しそうなのでレザーアーマーを取り寄せてもらうか。そう思って店員を探すが、店の奥まで行っても店員の姿が見えない。

 仕方がないのでレジカウンターの上に置かれたベルを鳴らす。


「はーい、すぐ行きまーす」


 すると店の奥の扉から声が聞こえ、少ししてから店員が出てきた。


「すいません、お待たせいたしました。どういったご用件でしょうか?」


 声が聞こえたときに気付いていたが、出てきた店員は女性だった。前回は男の店長が相手だったので意外に思いつつ用件を告げる。


「私は探索者でダンジョン産の防具を探しているのですが、軽くて動きやすいものはありませんか?売り場には金属製の鎧しか展示されていないのですが」


「そうですね、レザーアーマーなんていかがですか?ちょうど今週入ってきたばかりの物が奥にあるんですよ。お持ちしますので少しお待ちください」


 そう言うと店員は再び扉の向こうに消える。どうやら、取り寄せすることなくレザーアーマーが手に入りそうだ。

 そのまま待つのもあれだったので、防具売り場に戻ってガントレットやブーツなどの防具を見る。しばらく眺めていると、店員が大きな段ボールを抱えてやって来た。


「お待たせいたしました。こちらが先ほどお話ししたレザーアーマーになります」


 そう言って店員が抱えていた段ボールを床に下ろす。段ボールの中には簡素な革製の胸当てとリストバンドが入っていた。


「こちらの商品はダンジョン産の装備としてはランクが低いものとなっているのですが、軽さと動きやすさについては太鼓判を押せる物となっています」


「このレザーアーマーだと上半身しか守れないように思うんですが、どの程度の防御力があるんですか?」


 商品を見て気になったことを確認する。何となく展示されている金属鎧のように革鎧も全身を覆うような装備になるかと思っていたのだ。


「お客様はダンジョン産の防具は初めてですか?であればご存じないかもしれないんですが、ダンジョン産の防具の場合、装備箇所以外も膜のようなものに覆われて全身を守る効果があるんです。また、ダンジョン産の防具にはサイズ自動調整の機能が付いていまして、使用者の体格に合わせて防具の大きさが変化するんです。良ければ実際に装備して確認されませんか?」


 店員の言葉に驚きつつ、勧めに従ってレザーアーマーを試着させてもらうことにした。

 すると驚くことに装備した瞬間にレザーアーマーのサイズが変化して俺の体にぴったりフィットしたのだ。


「これはすごいですね。もうこれで下半身についてもレザーアーマーの防御が有効になっているのですか?」


 サイズが変化したレザーアーマーに驚きつつ、店員に確認する。レザーアーマーを装備している箇所以外に特に守られているというような感覚がなかったのだ。


「いえ、サイズ自動調整についてはダンジョンエリアの外でも機能するんですが、全身を守る機能についてはダンジョンエリア内部でしか機能しません。ですので今は純粋にレザーアーマーを装備している箇所しか守れていないですね」


「そうですか。ところで先ほどこのレザーアーマーのランクが低いというようなことをおっしゃってましたが、どの程度まで防ぐことができるんですか?」


「そうですね。このレザーアーマーですと第10階層程度までが適正レベルになります。ただ、使用者のレベルであったり、他の装備品などでも色々と変わってきますので実際の状況に合わせて装備品は交換していく必要がありますね」


 店員の回答を聞いて、意外に高階層まで使用できるんだなと思いつつ質問を続ける。


「他の装備品でも色々変わるとおっしゃいましたけど、そこにあるブーツを追加で装備するとさらに全体の防御力が上がるということでいいんですか?」


 先ほどまで見ていたブーツを示して質問すると、店員はそちらに目を向けながら答えてくれる。


「ええ、そうです。どうやらダンジョンエリア内では装備している装備品の合計の防御力がその人の防御力として扱われるようでして、装備品を増やすごとに全体の防御力が上がることになるみたいですね」


 ふむ、やはりそうなるのか。そういうことであればブーツも買おうか、そう思い店員に声をかける。


「では、ブーツも購入したいのですが、このレザーアーマーと同じランクの物を選んでいただけませんか?」


 そう頼むと、店員はガントレットやブーツが置かれたコーナーから革のブーツを1つ選んでくれた。

 それを受け取り、先ほどのレザーアーマーと一緒に会計を済ませる。レザーアーマーが30万円、ブーツが15万円で合わせて45万円だ。

 覚悟していたこととはいえ、装備品の値段にげんなりしつつ商品を受け取る。

 何にしてもこれで明日から再びダンジョンに挑戦できる。スライムへのリベンジを胸に抱き、店を後にした。

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