第11話 レベルアップと課題(1)
次の日の午後、再びダンジョンへと向かっていた。
目的は昨日と同じでダンジョンの様子の確認である。昨日、時間の都合で確認ができなかった通路を確認しに行くつもりだ。
監視所の入退場システムを操作して手続きを行う。退場予定時間は昨日と同じ2時間後。
手続きが終わると昨日と同じようにダンジョンクリスタルへと向かい、ダンジョンの階層に変化がないことを確認する。
予想通りダンジョンの階層が変化していないことを確認し、ダンジョンへと入った。
ダンジョンの階段を降りたところでヘルメットのライトを点けて周囲を確認する。とりあえずライトの明かりが届く範囲にモンスターはいないようだ。
それを確認し、ゆっくりと通路を進み始めた。
しばらく進んだところで道が左右に分かれているところに行きつく。左は昨日行って行き止まりだったはずだ。
左右を見渡してモンスターがいないことを確認し、ポケットからメモを取り出す。このメモは昨日の探索結果を簡易地図として描き出したものだ。
念のためにメモを確認したが、やはり左は昨日探索して行き止まりになっていた通路だ。なので、右の通路へ足を進める。
しばらく進むと今度は左に通路がある分かれ道に行きつく。
左の通路を昨日探索していることは先ほど確認しているので今度は悩まず直進する。
しばらく進んだところでグリーンスライムの姿が見えた。
どうやらまだこちらに気付いていないようだ。
慎重に近づき、上段から思い切りバットを叩き込む。
直撃する寸前にグリーンスライムに回避行動をとられたため、やや中心からずれてしまった。
しかし、ダメージは十分入ったようでグリーンスライムはやや離れた位置に転がったままだ。
すぐさまグリーンスライムへと近寄り、連続してバットを叩き込む。
4発入れたところでグリーンスライムが光となって消えていった。
「ふぅ」
周囲に他のモンスターがいないことを確認して息を吐き出す。
今のは不意打ちからそのまま倒すことができたので良かった。
だが、何発も攻撃を入れないと倒せないというのはツライ。やはり地道にレベルアップして強くなるしかないのだろうか?
その後、通路の先を進んでみたがこの通路は行き止まりだった。突き当りに何もないことを確認してから、先ほどの分かれ道まで戻ることになった。
先ほど直進した分かれ道を曲がり、通路を進む。すると十字路に行き当たった。
メモを確認すると、左が行き止まり、直進が部屋のある扉へ続く道、右が不明となっていた。
なので進むべきは残りの右の通路だ。メモをしまって右の通路に向かう。
数分後、俺はまたしても扉の前に立っていた。
どうやら第1階層に3つあるという部屋の内、2つ目の部屋が目の前にあるようだ。
慎重に周囲を窺いながら扉を開く。
「……」
内部を確認し、音を立てないように注意しながらゆっくりと扉を閉めた。
これは無理だ。見た瞬間にわかった。昨日の部屋よりもスライムが多い。
ざっと見た限りでは昨日の部屋よりも広かったので密度としてはあまり変わらないのかもしれないが、あれだけの数にたかられるのはごめんだ。
というわけで、今日も通路にいるスライムだけを相手にしよう。
そう決めて通路を戻り、昨日の小部屋に続く通路を進む。
扉にたどり着くまでにグリーンスライムが1匹いたが、特に問題なく倒すことができた。
また、途中にある落とし穴の罠もそのままのようだ。違和感を感じて確認すると昨日と同じように落とし穴ができた。
しかし、罠は移動しないものなのだろうか?いや、例の“闇のクリスマス事件”では安全であったはずの場所に新しく罠が設置されて発生したはずなので油断は禁物か。
そこまで考えてふと時計を見る。ダンジョンに入ってからそろそろ1時間になろうとしていた。
「とりあえずの目的だった通路の確認は終わったし戻るか」
そうつぶやいてダンジョンの入り口へと通路を戻る。
結局、帰る途中にもグリーンスライムを2匹倒し、2日目の成果はグリーンスライム4匹と新しい部屋の発見ということになった。
それから数日、毎日ダンジョンに挑戦し続けた。といっても相変わらず部屋の中に入る気にはならなかったので、通路にいるスライムだけを相手にしていただけだが。
まあ、そんな状態なので1日にグリーンスライムを2、3匹倒して終わりという日々だ。
変化としては、一度だけ青い色をしたブルースライムに遭遇したことだろうか。ただ、グリーンスライムを単純に強化しただけのようで、殴りつける回数が増えただけで特に問題なく倒せてしまったが。
しかし、そんなちまちました日々でも経験値は溜まっていたようで、ダンジョン挑戦から1週間でようやくレベルアップを果たした。
名前:森山 達樹(モリヤマ タツキ)
種族:ヒト
性別:男性
年齢:34
Lv.:2
HP:110↑
MP:109↑
STR:9↑
VIT:9↑
INT:12
MND:10
AGI:9
DEX:12
LUK:13
称号:探索者
スキル:ダンジョン適応、罠探知 Lv.1
ステータスを確認するとHPが10、MPが9、STR、VITが1ずつ上昇していた。
インターネット上の情報ではHP、MPは10ずつ上昇すると書かれていたが、どうやら必ずしもそうなるわけではないらしい。
まあ、金属バットでひたすら殴りつけていただけなのでMPが上がっている方がおかしいような気もする。それに対して、HP、MP以外の能力値でSTR、VITが上昇したのは当然の結果だろう。
レベルアップの結果に対してそう結論を出し、その日の探索を終了した。
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