第4章 デート 第3節 賭けてみたいもの

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 「私、

大金持ちになったって、

言ったよね。」


 「ああ、

『世界との懸け橋』さんから

60億円振り込まれたんだよね。」


 「ビルを買ったとしても、

せいぜい2~3憶なんじゃないかな。

医療器材はリースで。

メンテナンスはその都度。

軌道に乗るまでなんだしさ。」


 「沙恵さえちゃん…。」



 二郎じろうは、

沙恵がそこまで

自分のことを考えてくれている

ことについて、

少し考えてみた。


 俺の職業のことなのに…

どうして沙恵ちゃんが、

お金のことまで

考えてくれているのか。


 しかも、

『やよい軒』でおごった、

どころの金額ではないのだ。



 二郎の明晰めいせきな頭脳が、

素早く情報処理をした。


 沙恵の提案の意義を素早く咀嚼そしゃくし、

この状況に感情を素早くリンクさせた。


 自分の真実の感情と、直感と、

今後の幸福と、

家族や世の中との関わり

などを数値化し、

方程式をつくって頭の中で計算した。



 沙恵ちゃんは、

俺との将来…

俺たち2人の将来のことを、

考えている…。


 ああ、それなら、俺の方こそ…。

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