第3章 使い道 


 久々にばったり会ったから、

焼肉屋でご飯してしゃべった。


 謎の振込名義人ふりこみめいぎにんからの大金の振り込み、

という

強烈な出来事を分かち合うだけのつもりが、

大金の使い道として

奨学金一括返済を思いついて

提案してしまった。


 幼馴染おさななじみというのは、

子供の頃の印象が強い。


 しかも成人してからは

ほとんど会うこともなくなって、

両親同士の付き合いしかないから、

親からたまに様子を聞く程度だった。


 大人になってから実際会って喋ると、

大人になってからの人となりがわかる。



 幼い頃の面影おもかげや、

変わらない優しさも、

彼はそのままに残していた。


 幼馴染の私とは、

彼の昔ながらの性格で

会話したのだろうけれども。


 現在の彼と直接会話したことで、

現在の彼に触れた。


 ただ、家が近いだけの関係、

ただ両親同士が仲良しというだけの関係から、

現在の彼と会話したことで、

両親たちが知らない、

私たちだけの関係へ。


 …ん?なんだこの感情は。

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