第3章 使い道 


 彼はどのような男性に成長したのか。


 あらためて、二郎じろうの人間性が、

沙恵さえの心の中でクローズアップしてきた。


 優秀な成績で、

大学に現役合格したのに、

医師免許も持っているのに、

自分の欲を満たそうとすることもなく、

他人にマウントを取るわけでもなく、

ただ心のおもむくままに善行に奔走ほんそうしている、

純粋な男性。


 辞めた会社にいた人間たちが

比較対象となると、

二郎の『人間的価値』は

相対的にますます高まってくるのであった。



 二郎の『人間的価値』に

値段をつけるとすればいくらなんだろう。




 優しくて、頭が良くて、真面目で純粋。


 こんな形容詞で、

二郎のことは

幼馴染おさななじみというカテゴリーに収めてきた。


 ある意味、

過去の人だったのに、

頭の中でどんどん大きくなっていく。



 それは、なぜか。


 彼という人間に、

強烈に『価値』を感じたからである。


 過去の人から、現在を重ね、

未来の人になってゆく。

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