第12話

店主は優しくふみに接する…。


ふみも朝から晩まで健気に務める…。


文字の読めないふみに、読み書きを教え、算盤も手ほどきをした…。


ふみのしくじりを怒ることは無く、毎日、ふみの作る飯を褒めた…。


貸家を探してきたけれど、余分なお金は勿体無い、主が良ければ、このままここで、主が眠って起きるまでも、おらは主の世話をやきたい、お願いしますとふみは店主に頼み込む…。


「それは嬉しい、そんなに広い家では無いが、今となってはひとりは寂しい、ふみがおれば明るくなる…」



月に1度は商用だよと、偽り、廓へ秘かに行って、決してふみには触れもしない…。


ふみは心と身体の古傷も、癒され忘れるようになる…。


しかし、おらは禁忌の子、店主を慕う気持ちを抑え、毎日毎夜、店主に尽くした…。



店主の名は康次と言い、歳は、数えて、34歳、幼い頃に養子に出され、養父、養母が亡くなった後にこの店を継ぎ、道楽も無く、懸命に働いてきた…。


店は小さいが、繁盛しており、かなり裕福な暮らしが出来てる。


しかし、働くばかりで未だ独り身、すでに嫁は諦らめていた…。



「三十路をよっつも越して来て、もう嫁さんは諦めた」


少し寂しげに話していたが、


「ふみが来てくれたから、店も家も明るくなった…最近じゃ器量よしの看板娘だと客に言われ、私はいつも、鼻高々だよ」


そう言い、康次は笑っている。


「いえいえ、旦那様程、優しいお方はいやしません。嫁なら探せば幾らでも来ます」


「それなら、ふみが来てくれるか?」


「おらはとうに、汚れた身、それにおらは禁忌の子…」


「ふみ程、心根の良い娘はいない、他の女は、霞んで見える」


本当に、本当におらでいいのか?


ふみは自分の過去を話せず、ふみは心が痛くなる…。


ふみは数えで17歳になった…。



「店主、良い嫁御を貰ったな」


客に言われて康次は照れる。


「いやいや、此処に住み込みだけど、ふみは私の女房じゃない」


「しかし、互いに好いてる筈だ、見てれば俺にも良く判る」


客もふみに温かい…。


「ふみよ、誠に私の嫁に、私に嫁いでくれないか?」


「旦那様の気持ちは有り難い、出来ることなら添い遂げたい…しかし、おらは禁忌の子…ならば、せめてこの身体、抱いてくれて構わない…」


ふみは、初めて自分から、男を思い身体を開いた…。


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