第7話


翌々日、寺まで迎えが来た…。


僧侶に呼ばれ、門の所で待てと言う…。


迎えに来た使用人は、僧侶と何やら話している…。


そして、僧侶に布で包んだ何かを渡していた…。


ふみは横目で眺め、出発を待つ…。


「一生懸命励めよ」


僧侶の言葉にふみは頷き、僧侶に感謝を告げ使用人の後から歩き出す…。


ふみは新たな奉公先へ、街に行けると少しの期待と不安でついて行く…。


街に着き、街並みを抜け、平屋の家が立ち並び、それぞれの家から、カタンカタンと音が聞こえる…。


その奥に屋敷が見えて、ふみはその屋敷へと辿り着く…。


裏口で待つ様言い渡され、待つと中からひとりの女が現れた…。


土間に降りてふみの前に立つ…。


「私は、女中頭のキヨだ…名前は?」


「ふみです…」


「何だ何だ?どこの田舎娘かね…頭を下げて挨拶ぐらい出来ないのかね!」


ふみは慌てて、私はどうかよろしくお願いしますと頭を下げた…。


「歳は幾つか?」


「数えで13になりました…」


「お前はこれからあの家で、昼間は糸を紡ぐんだ…朝と夜は母屋で飯の支度だ!」


女中頭のキヨは平屋の指差して、ふみに命じ話を続ける…。


「ふみ、お前は3年間、昼夜休む事は許さないよ…お前の賃金は坊さんに3年分前金で渡して有るんだからね!」


お坊様はおらを売った?


だけんど、お坊様は命の恩人…3年間はお礼返しで働こう…。


「とにかく今日は風呂へ入れ!汚らしくてたまらない!」


風呂へ入り、湯から上がるとふみの着物は捨てられて、代わりの着物と帯があった…。


「すんません…おらの着物はどうしただ?」


「あんな汚い着物はかまどで燃やして灰にした」


「ばあちゃんの形見の絣(かすり)の着物…」


「生意気言うんじゃ無いよ!あんな汚い着物なんか、ここに置いて置けるか!」


「だども…」


女中頭は、手に持つ2尺程の竹の定規で、ふみの肩口を強かに叩いた…、


「口答えは許さない!逆らうとこうなるよ!」


ふみは涙を堪えて頷いた…。


「はい…分かりました…」


「これから、旦那様と奥方様に挨拶に行く…粗相をするんじゃ無いよ!しくじったら、また、折檻だからな!」


ふみは連れられ、座敷の廊下に正座する…。


襖が開かれ、ふみは深々と頭を下げる…。


「頭を上げな…」


旦那様と奥方様の脇に座る女中頭のキヨが口を開く…。


「ほぅ…これは可愛らしい…」


旦那様を横目で睨み、奥方様はふみに言う…。


「名は?」


顔を上げ、両手は膝前についたまま、ふみは奥方様へ返事する…。


「ふみと申します…歳は数えで13になります…」


「まだ子供だねぇ…キヨ、ちゃんと教育するんだよ!」


「ふみ…よろしく頼むよ…」


未だ目尻を下げた旦那様を睨みながら、ふみに向けた奥方様の瞳も、ふみに対して憎悪を宿していた…。



旦那様と奥方様のご夫婦様への挨拶も無事に終えたと女中頭のキヨに従い、連れられたのは、急な階段の上にある、天井裏の布団部屋…。


今日からここがお前の寝床とふみを床に座らせた…。


先程、お前は旦那様に色目を使い、奥方様を怒らせた…。


これは罰じゃと、竹の定規で背中を2度3度、ぴしゃりぴしゃりと叩きつけ、夜が明けたら、勝手場に来いよと言い捨てて、キヨは自部屋にさっさと戻って行った…。


余りの痛さに涙を流し、声を殺してすすり泣く…。


やはり、これは罰なのか?


禁忌の子だから罰なのか?


罰なら私は耐えましょう…3年間の年季明けまで耐えましょう…。


ふみは、涙を拭いて、決意した…。

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