クマのぬいぐるみ

 池のほとりのベンチに黒い髭を生やした男と、クマのぬいぐるみが仲良く座っている。まごうことなきぬいぐるみ、茶色と白の2色に表面の起毛は分けられる。肩を並べた二人の雰囲気は、どことなく仲良く見える。男の表情は無表情だけれど穏やかだからか。呼吸の様子、瞬きの仕方。季節と太陽の時間から仲睦まじい雰囲気が漂うのか。穏やかな気温と気候、太陽の光線のじりじりと服の表面に降り注ぐエネルギーにより男の皮膚と服の間の空気層がほかほかと温められている。ぬいぐるみのクマを今撫でると手のひらは暖かくて気持ち良いだろう、それならきっといつまでもすりすりと撫でていたい。

 雨の様子がないから男はぬいぐるみを外に連れ出したのだろうか。それとも男とぬいぐるみの関係性はベンチに座ってから始まったのだろうか。

 男とぬいぐるみには脅威が迫っている。現実的に彼ら二人が見舞う可能性のある脅威の確率が今急上昇している。それは池の奥に目をやればその因果が見えてくる。ボートに乗った別の男が釣竿で赤い大きなボールを釣り上げていて、水面に今や落とそうとしているのだ。


 そのような絵画をぼくは眺めた。居心地は悪くない。


 

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