片側交互通行(お笑いネタやで)

岩田へいきち

片側交互通行(お笑いネタやで)

「おお、なんか久しぶりやな」


「お笑い芸人さんから連絡来るまでやるって言った手前な、やらなあかんようになってしもうたわ、お笑いネタ」


「それで、今日は、なんの話題やねん? またコンビニネタか?」


「いや、コンビニの可愛いKAちゃん、バイト辞めてもうてな、ショックであんまり行ってへんのや」


「ほう、あんなに毎日バイトの子がいる時間帯、見計らって行ってたお前が行ってへんってよっぽど辛かったんやな。ハートブレイク、ブロークンハートやな」


「おお、英語やな。どこで覚えたんや? 」


「そりゃ、俺もしょっちゅう失恋してるからな。そのあたりの単語だけプロやがな」



「そっか、えらい自信やな。ほな、俺も今日のお題、英語で言うたるわ。『One lane Road』 もっとちゃんと言うと『One way alternating traffic road』やな」


「何やそれ? さっぱり分からんわ。お前、予習して来たやろ?」


「正直に言うわ。予習して調べたけど、俺もよう分からんかったわ。日本語で言うな。

『片側交互通行』やがな」


「なんか日本語になっても面倒な感じやな」


「田舎では、よくあるんやけどな、工事中の道路とかで片側だけを交互に通行できるようにするやつな」


「おお、あるある。警備のおっちゃんが白と赤の旗持ってな。『赤上げて、白上げて、赤上げてないで白下げて』ってやつな」


「それは、ドリフターズやがな。ちゃうがな。

赤上げて『止まってや〜』言うたり、白振って『行っていいで』とか言うやつな。それの信号機版の話や」


「ああ、いかりや長介似の警備のおっちゃんじゃなくてA Iの話な」


「色黒いからな。似てるかも知れんな。AIは、この信号機に入ってへん思うわ。入ってたらこんな問題起こらんかったかもしれん」


「問題? どんな問題、起ったんや?」


「それがな、去年の暮れからな、コンビニからうちに続く道な、ずっと工事してんねん。田舎道でな、片側1車線しかないからな、工事したら片側交互通行になってな。いちいち面倒やわ。青でギリギリ行けるかなぁ思うたら黄色にもならんといきなり赤やがな」


「おお、黄色ないな。青が点滅していきなり赤になるな」


「そんで、そっから1分30秒やねん。長いわ〜。世界を秒単位で飛び回ってる俺にとっちゃ、長いわ〜。しようがないからテレビでも見るかとつけたら映らへんしな」


「お前んとこ田舎やからな」


「そうなんや。肝心なところが場所によって電波入らへんのや。それでもな、この前までは、丁度、KAちゃんの家の前に信号機があってな。『KAちゃ〜ん』って手を振れるからええねん。それで良かったんやねん。むしろ赤で止まらへんかな。赤に変わってや~って思うねん」


「ああ、コンビニのお姉さんと近所やて言うとったな。危険やな。KAちゃん、早よ、逃げや」


「そんなまた、他人をストーカーみたいに言わんといてや。大丈夫やて、車で通り過ぎるだけなんやから。そこまでは、まあ、良かったんやけどな。最近な、KAちゃんちとうちの入り口の間に信号機が移ったんや。どういう状況か分かるか?」


「お前んちの入り口が片側通行の途中になったってことか?」


「凄いやん。お前、天才か? 愛してるわ」


「やめれって。それくらい誰でも分かるわ」


「それがな、お前の言う通り、片側通行の途中になったんや。信号機、右手のやつも左のやつも向こう向いてるから赤か青か見えへんねん

「そうか、見えへんな。気の毒やな。どうしてんのや?」


「行きたい方向の車が何台か通っていれば、その最後の車に直ぐ付いて行って多少の猶予はあるからな。最後尾に付いてきた車として抜けれるねん。もしくは、反対方向の車の最後尾が行った後にそっち側の信号は、赤で後続は止まっとるなと出る方法な。


「おお、なんか面倒くさそうやな」


「そやろ、予想で走っとるから、万が一対向車の信号が青やったらどおしよう?とハラハラしながら走っとったわ」


「そら、ちょっと怖いな」


「怖いなぁ、思うてる時事件は、起こったんやわ」


「おお、待ってました。事件やがな。そこら辺にコナンがいるんやないか?」


「おらんわ。おったら人が死んどるわ」


「殺人事件と違うかったか」


「そんでな、朝な、会社に行こうと出たんやわ。車なんも通ってへんし、対向車、信号機の前で止まっとるしな。たぶん行きたい方向の最後尾から少し遅れて付いて出た感じな。そしたらな」


「そしたら? まさか」


「そっ、そのまさかやねん。俺まだ抜け切れてへんのに信号機で止まっとった車が青になったのか飛び出したんや。こっちのこと全然見えてへんのやろな。レースの信号が赤から青に変わる感覚でスタート切ったんやろな。そしたら

目の前に車や。止まらざるをえんよな」


「そらそうやろな。そのまま行ったら正面衝突やもんな。その人もびっくりしたやろな」


「もうカンカンやがな。黒い、タイヤがハの字になった大きい車の若いヤンキーみたいな兄ちゃんやったけどな。車、ブアンブアン、低い音鳴らして怒っとったわ。俺が赤信号無視して来た思うてたんやろな。そんでも左に寄ってくれたら軽くかわせるのにな、その兄ちゃん、怒ってるからな、どかへんねん。しばらく睨み合いやがな。


「おお、それでお前、そいつを刺したんやな?」


「コナンは、来てへんって。車、降りてどついたろうかと思ったけどな。逆にどつかれるのは目に見えてるからな」


「そりや、お前じゃ勝てへんな。どうしたん?」


「その横をごめんなの合図しながら狭かったけど通り抜けたわ。怖かったあ。運転上手で良かったわ〜」


「良かったわ。人死なへんで」


「これで終わる思うやろ? そんなにコナンの事件は単純じゃあらへんで」


「おお、やっぱり、人死ぬんかいな? ドキドキするな」


「殺すな」


「翌日やがな」


「犯人は、お前や。やっぱり悔しゅうて、兄ちゃん刺しに行ったんやな?」


「ちゃうて。対向車の最後尾の車が過ぎた後に出たんやな。対向車は、信号機の前で止まっとるしな。そしたらな」


「そしたら? 毛利小五郎が?」


「だからコナンは来てへんて。来てるんだったら蘭姉ちゃんに会いたいわ。今度は、トラックやがな。大きなトラックが俺まだ全然抜け切れてへんのに出て来やがった。ぶつかっても後ろへ押し戻される勢いやがな」


「トラックかぁ。そりゃ、もう無理やな。ヤンキーの兄ちゃんより強いわ」


「そやろ。どうも、対向車の最後尾と思うとった車はな、信号がまだ赤なのに見切り発車で出てきた車だったらしいんやわ。3台も4台もおったから俺はてっきり最後尾と思うたらフライングの信号無視の車やったんや。トラックの運転手は、ちゃんと青になるまで待って出て来たんやな。もっと、中を見てから出て来てよと思うけど、しょうがない。みんな信号見とる。『赤なのにあいつら行ってもうたな。対向車も止まってるみたいやしな』ってな。トラックは、まあ悪くない。俺の車も信号無視の車に紛れて気づかなかったんやろ。下がる必要ない」


「じゃ、お前が後戻ったんか?」


「いや、俺はバックは、苦手やねん。戻ったら会社遅刻しちまうからまたトラックの横スレスレを抜けたがな。怖かったあ。土手に落ちそうやったわ。運転、上手で良かったわ。


「良かったな。遅刻せぇへんで。おるんやな、対向車が止まったからって、赤なのに動き出すやつがな」


「そうなんや、そんなやっが余計おるんやわ。あいつら分かってへん。信号無視やで。夜の交差点で、車、全然通ってへんから赤でも通ったろって出たら信号無視で完全に捕まるで。分かってるかんいな。俺がトラックとぶつかって死んでたらどうするんかいな?

俺がヤンキーの兄ちゃんに刺されたらどうするんかいな?」


「そん時は、コナン呼んでやるわ。そんで、まだその工事やってるんかいな? 危険やな」


「今日で終わっとったわ。うちからKAちゃんの家までの道は片側交互通行でのうなった。

道は、片側通行でのうなったけど『One Way』やな」


「何や『One Way』って?」


「あれ? お前、失恋あたりの単語のプロやったんやないんかい?


『片想い』やがな。


「 「ありがとうございました。」 」


終わり

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