第7話
俺は本屋を出た。なんだろうこの解放感、なぜ自分がここにいて、なぜこんな解放感に包まれているのかさっぱりわからない。なにも考えられないし、思い出せない。だけど心も体もこんなに軽い。俺はたぶん世界一自由だ、幸福だ、何一つ俺を縛るものはない。天にも昇るような気持ちとはこのことだろう。何も警戒することなく自由に歩くのがこんなに幸せだとは。
「ざくっ」
気分の良いところで妙な音、嫌な音がするものだ。なんだろう。自分の背後から聞こえる音に振り向いた。目が合った、女の姿が見えたがすぐに消えた。消えたのは女だけではなく、俺の視界のすべてが消えた。両目を切り裂かれたのに気づくにはしばらく時間がかかった。その後体のあちこちを穿つ、刺すような痛みに襲われ続けた。誰が、なんで、どうして、わからない。声にならない声で叫び続けた。俺は自分がなぜこんな目に遭うのか全く理解できず、体中を鋭いもので抉られ続けた。
「許して、助けて、なぜ俺をこんなにも傷つける?」
襲撃者に懇願するもそれは届かないようだ。俺はなぜこんな目に遭っているのだろう。幸せな人生をつかんだと思った矢先に。俺は薄れゆく意識の中襲撃者に憐憫を期待した。
新聞記事には乗らないネットニュース。真偽も定かではない噂話。殺されたのは元強姦魔、そして殺したのはかつての被害者。そこに載せられていたのは、被害者による加害者への復讐劇。己が死んだふりをしながらも、自分の人生を殺しながらも凌辱者への復讐を待ち続けた殺戮者の復讐劇。
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