第3話

 俺は追われていた。罪は償ったし、そのお相手はもうこの世にいないはずだった。それなのに俺は追われる恐怖におびえる日々を過ごしていた。


 あの夜俺は酒に酔っていた。そして通りすがりの女がたまらなく欲しくなった。そして後をつけてその女のアパートに忍び込みことに及んだ。

「騒ぐな、声を出しつ殺すぞ。」

 我ながら月並みなセリフを吐きつつ、抑えきれない興奮と欲情を会ったばかりの女にぶつけた。女は泣きながら懇願した。交際相手がいること、まもなく彼と結ばれること、自分が幸せ絶頂の一歩手前にいること、それを俺に説きながら許しを請うた。しかしその言葉は俺の怒りにも似た征服欲を煽るだけであった。


 ことが終わり自室に帰った翌日、俺はあっという間に逮捕された。俺に蹂躙された彼女の交際相手が通報したらしい。どう考えても俺に有利な条件がない裁きはあっという間に終わり、俺は長い間塀の中で過ごした。もちろん俺は反省した、自分の犯してしまった罪について向き合い、謝罪文を書き綴る日々を送った。その間に自分が思うままにした彼女が自死を選んだことを知った。改めて自分の罪深さを悔い改める日々が続き、やがて俺は娑婆に出る日を迎えた。誰も迎えに来ないし、どこに行く当てもない。俺が辱めた彼女の墓参は遺族から固く断られてしまった。罪を償いはしたもののすべてを失った俺が一人世の中に放り出された。


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