第六文「微妙な再会2」
逆に真夏の炎天下も遠慮したいが。
―しかしあんまり無気持ちいい陽気だと、まったり寛ぐを通り越して爆睡しそうだな・・・
「わー・・・ここって見晴らしいいんだなぁ!向こうのビルより二階分フロアが高いだけなのに、景色違うなぁ・・・」
がたん、と隣に腰掛ける音とともに、大きめの独り言が聞こえた。
ぼんやりまったりしていた脳みそは、途端に現実に引き戻される。
―うるさいのがきたな。
カウンター席は有無を言わさず相席状態になるのが難だ。景色を平等に楽しめると言うメリットもあるが、両隣が近い分、プライベートの空間はあまり保証されない。
―癪だから、もうちょっとだけ居座って様子を見よう
後になって思えば、ここで意地を張らなければ、面倒なことには巻き込まれなかったのだが。
「最近は、こっちに通っているんですか?」
話しかけてきた。
誰だコイツ?
ていうか、何だかデジャヴをガンガンに感じるんですけど気の所為ですか。
「はい?」
視線を声の主のほうへ上げてみる。
目が合うと、わりとナチュラルな営業スマイルが返ってきた。
男友達も多少はいるが、仲間内にこんな知り合いいないと思うんだ。
―立ち上がったら、相当でかいんだろうな。
頭ひとつ分くらいは見下ろされている。
人懐っこそうな顔つきの為か、そんなに威圧感はないのだが。
「・・・どこかでお会いしましたか?」
訝しげな表情を作り、素直な質問をぶつけてみた。相変わらず警戒心のアンテナはびしびし立てている。
男は「あー・・・やっぱり覚えてないかー」と言いながら、ばつ悪そうに頭を掻いて苦笑いした。
「誰かの知り合いですか?」
「あー・・・いえ、そういうわけじゃなくて・・・・。あ、前によく行ってたカフェ、覚えてます?カフェ・アレグロ。僕、そこのバイトなんです」
―・・・どこのカフェだろう・・・名前いちいち覚えて居ないんだけどな・・・
と思いつつ、何となく思い当たった事を確認してみた。
「本間堂書店の中のカフェ、かな?そこならしばらく通っていた時期はありましたが・・・」
「そう!そこですそこ!で、僕のことは・・・・・・・やっぱり覚えてないみたいですね・・・ははっ」
「そうですね、すみません」
特に悪びれる感じもなく、言葉だけの謝罪を並べた。
カフェの店員いちいち覚える趣味は無いからなー。
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