第四文「変化」

また、僕自身も本が好きだと言うのもあり、同じ類の人を見つけると嬉しくなって、それだけでも親近感が沸く。書店にあるカフェにバイトを決めたのも、それが主な理由だ。

ここならば、帰りに幾つか物色してすぐに買えるし、書店の店員さんたちと親しくなれば、新刊入荷の情報もいち早くチェック出来る。


そして何より、本が好きな人たちとの出会いもあるのだ。



ぶっちゃけると、趣味の合う彼女が出来るといいなという、なんとも浅はかな、淡い期待もあったりするんだけど。




女性客はたいてい友だち連れか、カップルで来る人たちが多い。一人で来店して、本を片手にゆったり時間を過ごす人は、ほとんどいないのが現状。僕の勤務シフトや、時間帯のせいも有るのかも知れないけれど。





―?



椅子とテーブル周りを綺麗に整え直して、何気なくまた彼女の方に視線を向けたとき、僕は初めて、ある異変に気づいた。



―見間違いかな?



あまりその場に立ち尽くしているのも不審に思われてはいけないので、僕は一旦カウンターに引っ込むことにした。そして、遠巻きに彼女の表情が見える位置から、そっと様子を窺うことにしたのだ。




すると。




ページを読み進めていた彼女の顔が、途端に綻んだ。



そして・・・。



―やっぱり。思ったとおりだ。見間違いじゃなかった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る