第14話、名も亡き神殺しの物語

 ……一人の少年のはなしをしよう。其れは、名もき神殺しの物語。

 全てのごうを背負い、神へ挑んだ少年の物語ストーリー

 ・・・ ・・・ ・・・

 俺の心身に力がちてくる。大罪の因子が全てそろい、悪魔が揃い、俺の中で力が満ちてゆくのが理解出来る。

 俺の中で、全能ぜんのうにも等しい高揚感が満ちてゆく。今なら何でもできそうな気さえ感じてくる。だが、

「ぬうっ、よもや大罪の因子が此処ここまでの力をめ込んでいたとは。やはり、此処で始末する必要ひつようがあるか……」

「だが、まだだ。まだこれでわりではない」

「何?」

 そう、まだだ。まだ、此処で終わりではない。俺は揃った大罪の因子を組み込んで新たな異能ちからを組み立てる。

 憤怒のサタン―――無限の自己強化。

 怠惰のベルフェゴール―――他者への支援、加護かご

 強欲のマモン―――周囲のあらゆる力を自己へと収束しゅうそくする。

 暴食のベルゼブブ―――無限の捕食能力。

 色欲のアスモデウス―――生命いのちの操作や創造。

 嫉妬のリヴァイアサン―――自己の意思による周囲の変換能力。

 傲慢のルシファー―――あまねく全てに対する支配力。

 ベリアル―――虚無ゼロからエネルギーを抽出し、望む力に変換へんかんする。

 そして、其処へ俺は理解、解析能力を組み込み新たに異能いのうを組み上げる。神を殺すだけの特級の異能として、俺自身をつくり換える。

 ———そして、俺は。

「神を殺す。神を殺して、全てをり戻す……」

「ぐぬっ、貴様……」

「……今なら分かる。神よ、お前は元々神ではない。元はただの人間ヒトだった」

「っ⁉」

 俺は、言葉と共に剣をるった。瞬間、神という存在に亀裂きれつが走った。見た目には何の傷もついてはいない。しかし、俺には分かる。

 神は今、その存在に重大な損傷キズが入ったと。

 神言詠唱しんごんえいしょう———相手の存在を全て理解し、暴く事で対象を解体かいたいする理解の剣。

「元々ただの人間だった貴方は善や正義といった概念がいねんに執着していた。それ故に、自身の中の悪性あくせいすら許容出来なかった」

「只人の貴様が、我をあばくなっ‼」

 神が俺に攻撃を仕掛ける。しかし、俺は一人でいどんでいる訳ではない。

 俺への攻撃を、全てゼンがしのいでくれる。ゼンが、神の攻撃をり払う。

「故に貴方は、自身の内にある悪性の感情を全て自身から切りはなした。切り離し、捨て去り封印じたのだ。それが大罪の因子であり、悪魔あくまの正体だ」

「っ⁉」

「自身の内から全ての悪性を取り除いた貴方おまえは、神となって全ての人類から悪性を取り除く事にした。元々貴方が生まれ育った世界は科学と魔術の双方が極限まで発達した世界だ。自身を神と呼べる存在へと昇華しょうげし創り変えるだけの技術はあった」

「お、のれ……貴様、のような……小僧こぞうに…………」

 もはや、致命的ちめいてきだった。神と呼ばれたその存在は解体かいたいされ、ほぼすべての力は削ぎ落とされてゆく。その力は、ただの人間にが生えた程度。

 もう、抵抗ていこうするだけの余力すら残ってはいない。

「その力で、貴方は元居た世界をほろぼした。自身とおなじ存在が生まれ、自身の邪魔にならないようにだ。そんな貴方は到底善なる存在かみとは言えない。何処までも独善的で身勝手な、ただただ矮小わいしょうな存在でしかないっ‼」

 そうして、再度にその存在への断罪だんざいの言霊を唱え剣を突き立てる。

 神は、その存在を全て暴かれ崩壊してゆく。

 くずれ、消えてゆく。

「消えてゆく……くなってゆく……我が、私、が…………」

 消え、て……

 最後、神と呼ばれた矮小ちいさなその男は光の粒子となって妄執もうしゅうと共に消え去った。

 神殺しをし遂げた、その瞬間だった……

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