第9話、本当の意味での再会

 目がめると、其処は深い森の中だった。周囲は背の高い木々にかこまれ夜のせいもあってとても暗い。俺のそばには、シアンの姿があった。というより、俺に覆いかぶさるようにき締めて寝ている。

 シアンの服の隙間すきまから覗く豊かなむねがちらりと見えて少しばかりドキリとする。が、俺はすぐにその煩悩ぼんのうを振り払うとシアンをそっと抱き締めた。

「……ごめん、シアン。今までずっと心配しんぱいさせて」

「……んっ、んん?」

 ぼそりとつぶやいた俺の言葉に、シアンが反応はんのうしたのかゆっくりと目を開いた。シアンと目が合う。しばらくぼうっとしていたシアンだが、やがて目を見開みひらいていき。

 その目からうっすらと涙がにじんできた。

「……えっと?心配かけてごめんなさい」

「っ‼」

 シアンが俺の身体を強く抱き締めた。涙を流し、声も無くきじゃくる。そんな彼女の事が無性にいとおしく、そっとシアンを抱き締め返す。

 驚き俺の顔を見返みかえすシアン。だが、やがてその表情かおがくしゃりと崩れ再び抱き付く腕に力を籠めてくる。

 ……本当にごめん、シアン。今まで心配を掛けて。

 ・・・ ・・・ ・・・

「……えっと、あの。すいません取り乱して。はなしてくれませんか?」

「ごめん、それは無理むりだ」

「……あぅっ」

 俺はシアンを放さないようぎゅっと強く抱きせる。シアンは顔を真っ赤に染めて俯いた。かわいい……

 いやまあ、うん。はっきり言ってすこしばかりテンションがおかしいのは俺自身はっきりと自覚じかくしている。けど、ごめん。そんな泣きそうな顔で睨まないで欲しい。かわいくて少し暴走ぼうそうしそうだから。

 うん、ごめんなさい。

「……ごめん、シアン。今まで、ずっとずっと心配を掛けて。ずっとずっと不安だった筈なのにな」

「えっと、シドー?」

「思い出したよ、色々と。幼い頃の君の記憶こととか、事故じこの事とか」

「っ⁉」

「だから、ごめん―――」

「シドーっ‼」

 瞬間、シアンは再び俺に強く抱き付いた。ぎゅっとし付けられ形を変えるシアンの胸にドキリとするが、それ以上にシアンの泣き顔にもうし訳なさを感じたから。

 俺は黙ってシアンを抱き返した。強く強く、抱き返した。

「……シドー、くるしいです」

「ごめん、いやだったか?」

「いえ、そのまま貴方シドーを感じさせてください。もっともっと、もうしばらく貴方を感じていたいです」

「ああ、分かった……」

 そうして、俺はぎゅっとシアンを抱きせる。

 見詰め合う俺とシアン。からみ合う視線。やがてその距離きょりは縮まっていき、その距離はぜろになった。

 絡み合うように抱き締め、口付ける。今、此処に俺達を邪魔する無粋ぶすいな奴は一人も居ない。俺とシアンははやる気持ちにまかせてキスをした。

 ……そうして、しばらく。俺とシアンは互いにそっとはなれると二人して照れ笑いを浮かべた。そして、俺達の思いを互いに口にする。

「今までごめん、シアン。大好だいすきだ」

「はい、私だってあなたの事をあいしてます」

 そうして、再び俺達はキスをわした。

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