第10話、次の世界へ

 目をました。気付けば、朝日が木々の隙間すきまから差し込んできていた。

「……………………」

 色々とすごかった。何がとは言わないけど、少しばかり自制じせいが利かなかった。流石にこれからはひかえよう。シアンの為にも。

 うん、自制出来るかどうか分からないけど。実際、今もあられも無い姿すがたで俺に抱き付いてているシアンを見て少しドキドキしている所だ。うん、流石にこれは自制出来るかどうか。まあ、流石にしなきゃいけないんだけど。

 最後は結構大きな声を出してたからなあ、シアン。まあ、俺が言えた義理ぎりではないのは理解しているけど。

 止めよう、これ以上は不毛ふもうだ。

「ん、んうっ……?」

「あ、ああ。きたか?」

「えっと、シドー……?」

 目を覚ましたシアンに、俺はそっとシャツをかぶせる。うん、裸の上にシャツをかぶせると余計よけいにこう……

 いや、今は考えるな。流石に不謹慎ふきんしんだ。俺はそのままそばにあった服を着た。

 シアンも今の状況を理解りかいしたのか、顔を真っ赤にめながらいそいそと服を着る。

「色々とごめん、自制じせいが利かなかった……」

「うん、私こそごめんなさい。少しはしたなかったかも……」

「「……………………」」

 たがいに顔が真っ赤に染まる。うん、今更ながらにずかしい。いや、照れていても仕方がないのだが。それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。今はこれ以上考えないようにしないと、うん。

 ちらっとシアンの方を見る。昔、俺達がまおさなかった頃。俺達は交通事故のせいで離ればなれになってしまった。

 シアンはらない。俺があの時、一度本当の意味いみで死んでいた事を。

 一度死んで、悪魔の力で蘇った事を。シアンは知らない。おそらく、シアンは俺が重傷を負いその影響えいきょうで記憶をうしなったと思っている筈だ。

 けど、そうではない。俺は死から蘇る代償だいしょうで記憶を失っていたのだから。

 それを彼女にかすつもりはないけど……

「シアン」

「えっと、何?」

「これからもよろしくな」

 俺の言葉に、シアンはぽかんと呆気あっけに取られたような顔をしていた。しかし、やがてにっこりと満面のみで笑った。

「はい」

 ・・・ ・・・ ・・・

「ふむ、失敗しっぱいしたか……」

 神域にて、神は小さく言葉をらす。それは、淡々としたつぶやきで感情が一切籠もっていないうつろな言葉だった。

 神にそのような感情の機微きびは薄い。限りなく薄い。

 何故なら、神は遥かむかしにそのような感情の全てを切りはなしばらばらに封じたから。

 それ故に、神にそのような感情の機微は薄い。完全に失った訳ではない。しかし、そのような感情は不要ふようなものとして捨てたのだ。故に、神にとってかつて切り離した感情の化身である悪魔たちは忌々しい過去の遺物いぶつでしかない。

 ゆえに、

始末しまつしてくれる。今度こそ、全てを……」

 そうして、神は自らうごき出した……

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