異世界転生するなら、これを知っておかなくちゃ!

ちびまるフォイ

神様の手違いで転生します

中略。


「こ、ここは……俺は死んだはずじゃ……」


「佐々木様、目が覚めましたか。ここは転生待合室です」


「待合室!?」


「これからあなたは神様の手違いで異世界に転生されるんですよ」


「もう"手違い"って決まってるんですね」


「様式美みたいなものです」


「しかし、ついに俺も冒険者に……!

 それじゃここで神様からチートとかもらえたり?」


「あそれは待合室の次の場所ですね」


「え。じゃあここは?」


「転生を待つための部屋です。名乗り遅れましたが、私は佐々木。

 これから転生する方に向けてオトクなオプションをご紹介しています」


「佐々木って……同じ苗字ですね」


「佐々木健人と申します」


「あ、俺は佐々木賢人です。名前まで一緒なんですね」


「これも良い出会いでしょうから、ぜひオプションをご検討ください」


「それでそのオプションというのは……?」


佐々木はでかいフリップを取り出した。


「これから異世界に転生するといっても、

 佐々木様ははじめての転生。なにかと不安じゃないですか」


「まあ……。そうですね。ひとり暮らししたこともないですし」


「そこで、こんなサポートがあるんです。あんしんリレイズ保証。

 これに入っておけば、1日1回まで死んでも復活できますよ!」


「でもチートがあるし……」


「そのチートもどういったものかわからないでしょう?

 それに死んじゃったら何も意味がありません。

 このサポート入っておいたほうが安心じゃないですか?」


「うーーん……でもお金が……」


「佐々木様、ご安心ください!

 この保証は後でお支払いしてもらえればOKです。

 転生後にお金を返してもらえればそれでいいんです」


「それじゃ加入します」


「ありがとうございます!!」


すると、佐々木はまた次のフリップを出した。


「ところで、佐々木様はコミュニケーションには自信ありますか?」


「ないですけど……」


「で し た ら !

 このあんしん会話サポートも入ってみては!?」


「え、ええ……!?」


「なんと、このサポートに入れば異世界の言語を自動翻訳。

 さらに、最適な回答や円滑なコミュニケーションをサポートしてくれます!」


「それはよさそう!」

「でしょう!」

「入ります!」

「はい、1件契約はいりましたぁーー!!」


また佐々木は次のフリップを取り出した。

もはやひとつの芸風になっている。


「佐々木様、物持ちは良い方で?」


「いえ、力が強いのかちょいちょい壊しちゃいますね」


「でしたら、この装備あんしん保証サポート・エヴォルブに加入しては!?」


「そ、それはいったい……っ!?」


「これに加入すれば装備がカケたり水没したりしても、

 1ヶ月以内なら無償で鍛冶屋で直してもらえちゃうんです!」


「おおおお!!」


「そのうえ! 今ならなんと、加入してくれたカモ全員に!

 剣の持ち手へキレイにガラスフィルムを貼るサービスをしています!」


「かかかかか加入します!!」


「そう言ってくださると思ってました! ありがとうございます!!」


フリップを切らした佐々木はチラシの裏に次なる新サービスを書いておすすめする。


「クモや蛇といった苦手なモンスターを自動でぼかしてくれる

 あんしん視覚フィルタリングサービス!」


「入ります!」


「現実世界に電話するときに、0.1秒まで無料になる安心サポート!」


「入ります!」


「防具が虹色に輝くあんしんゲーミング装備サポート!」


「かっこよすぎる!! 入ります!!」


のべ30件ほどのサポートに入った佐々木は安心した。


「佐々木様……ありがとうございます。

 すべてのサポートに入ってくださったんですね」


「やっぱり転生してから何があるかわからないですし」


「賢い選択です。安心には何にも代えがたいですから」


「これで俺の異世界ライフは快適そのものだ!!」


「ええ、間違いありません!!」




ーー 佐々木よ……この声が聞こえるか



神が待合室に待つ佐々木に向けて語りかける。



ーー これからお前を異世界に転生する。準備はよいな



「はい!! お願いします!」



ーー よかろう。では異世界に行き世界を救ってくるのだ……!



神は驚異の力で佐々木を異世界に送り込んだ。



異世界で目覚めた佐々木は遠くに広がる平原にぼうぜんと立ち尽くしていた。


「て、転生されちゃった……」



かくして、オトクなオプションを紹介していた佐々木健人は

神様の手違いにより異世界での冒険をはじめるのだった。






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