第12話 賢治は聖剣を手に入れた!
今俺はゴツイ革張りのゴーグルを付けている、レンズも黄色で側から見ても危ない奴と思われるかもしれん。
実際一緒に乗っているエレベーターガールが怪訝な顔をしてこちらをチラチラ見ていて恥ずかしい…
「もうすぐ着きますので賢治さんには防御結界を貼りますね」
「あ、はい」
ロールプレイ徹底してますね妖狐さん!
妖狐さんは何やらつぶやき始めた。
「大気に満る力よ我は妖狐…」
ぴょこ!
え?
妖狐さんの頭に耳が生えた!
あれってその名の通り狐の耳なのか?
凄いな、本当に生えてる様に見えるぞ!
おそらくVR《バーチャルリアリティー》の要領でCG《コンピューターグラフィック》と合成して表示しているのだろう。それにしてもリアルだ。
そうなると尻尾も生えそうだな…
「我が神、
おお、異世界ロールプレイといえば魔法ですよね~
しかし、ケモ耳が付いた妖狐さんは可愛さ倍増です。
妖狐さんが呪文を唱えると俺の周りに透明な六角形の板が無数に並び初めた。
板は規則正しく足元から積み上げられやがて全身を覆ってしまった。
パシーンッ!
音と共に並んだ板は見えなくなってしまった。
すっごいな、これがVRと言うものか!
噂やゲームの宣伝なのでは良く聞くVRだが俺自身はまだ体験した事はなかった。
「ふぅ、これで大体の攻撃は防げますから安心してくださいね賢治さん」
にっこり満足気に微笑む妖狐さん。
見るとすでにケモ耳は無くなっていた。
残念、ずっとケモ耳でいいのに…
尻尾も生えなかったし…
(転送装置案内人の発言!)
「まもなく地上360m展望台に到着します、ありがとうございました」
「さあ、着きますよ。気を付けて下さいね」
エレベーターから降りるだけだが妙に緊張感が増した。
エレベーターの速度が緩やかになり停止する。
ガコーン!
エレベーターの扉が開かれた。
(転送装置案内人の発言!)
「良き冒険になりますよう、お気をつけて」
例によってエレベーターガールは何も言っていないのだがゴーグルの翻訳にはそれらしいメッセージが表示される。
エレベーターを降りた。
その瞬間に周りの景色がどんよりとした感じになった。ロールプレイでの表現でその様に写し出されているのだろうが感覚的にも重い空気を感じる気がする。
ピ!
ゴーグルのマップに展望台であろうマップが表示された。そしてその中に二つの赤い点が表示されている。
展望台は円形でエレベーターの出口とは反対側の場所にその赤い点はあった。
「どうやら5匹のモンスターが居るみたいですね」
「え?マップには赤い点が二つしか表示されてませんけど?」
「この展望台は2層になっているので残りは上にいるみたいですね」
なんと上があるのか。
「注意してもらいたい事があるのですが、モンスターは普通は見る事も触れる事もできません」
「ですが特殊なフィールドに入る事で見る事も触れる事もできるようになります。そのフィールドの生成はすでに完了しているので賢治さんはそのゴーグルと私の結界で生成したフィールドで行動ができるようになります」
フィールドと来たか。大分強引な設定だが異世界ではモンスターが出るのが定番。
異世界旅行と言うロールプレイでは当然の展開だろう。
「すでにフィールドには入っていますのでこれからモンスター討伐に向かいましょ」
いいね、なんかワクワクしてきた。
「はい、お願いします!」
「あ、俺武器も何も持ってないのですが?」
「ああ、そうですね。ではこれを」
そう言うと妖狐さんは展望台入り口にあった土産物店に並んでいた木彫りの模擬剣を掴むと俺に渡した。
ポロン!
(賢治は聖剣を手に入れた!)
いやいや、これ土産物の木の剣じゃん!
俺の国の木刀とも違う西洋風の両刃で柄など装飾が綺麗に彫られている木の剣だった。ちゃんと鉄でできていれば聖剣と言われてもいいかもしれないデザインだが…
「これ土産物の剣ですよね⁉勝手に取って大丈夫なんですか?」
「ええ、後で戻せば大丈夫ですよ」
そういう問題なのか?
まあ、どうせVRの実在しないモンスターを切るのだからその辺の棒でもいいのだろうな。
「では右周りで行ってみましょう、私から離れないでくださいね」
ゴーグルを通して見る展望台の中はどんよりとして見えている。
何人か他の観光客もガラス越しに外の景色を見ているようだ。
ん?
様子がおかしい、目の前に若いカップルが外を眺めているがまったく動かない…
「言い忘れましたがこのフィールドの中では時間は止まってますので他の人に攻撃を当てないようにしてくださいね」
ん?
これVRだよな? 時間が止まるってそんなん出来たっけ?
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