第11話 妖狐♡
妖狐さんの機嫌がなぜか悪い。
俺がエレベーターガールをまじまじと見ていたからか?
いや、でもそれはいわゆる嫉妬と言うやつか?
俺に⁈
まさかな…
ポーン!
エレベーターが降りて来た様だ。
(転送装置案内人の発言!)
「中にお入り下さい」
エレベーターの扉が開いて中に進む。
同時に妖狐さんが俺の左腕にまた右腕を回して来た。今回はちょっと力強い。
うむ、あれだなこれはガイドとしてのサービスだな。これもロールプレイなんだな。
28年間こういう事は一切無かった俺が妖狐さんのような人に好意を持たれるなどあってはならないのだ。よし、理解した。
ロールプレイとして今の状況を理解しよう。
でもこの状況ははっきり言って嬉しいな。
この旅行に来て良かったと思える。
エレベーターの扉が閉まる。
乗ったのは俺たちとエレベーターガールだけで他は居なかった。
そういえば上から誰も降りて来てなかったな…
降り口は別なのだろうか。
そんな事を思いながらエレベーターは高速で上に上がって行った。
ビー!ビー!
な、なんだ⁉︎
突然メガネから警告音が頭に響いて来た。
ピン!
(塔上層にモンスターが現れました!)
はい?
また突然なロールプレイだな。
「妖狐さんこれって?」
妖狐さんは組んだ腕を離して慌てて携帯を出した。
「そんな、こんな予定なかったのに!」
え、どういう事?
なんかトラブルか?
妖狐さんは携帯でどこかと連絡をしている。
エレベーターの中でも繋がるのか…
「そんな!どういう事ですか?」
何?どうした?
「はい… はい… 何でそんな事…」
なんか申告そうだ。
「ええ?何かあったらどうするんですか⁈」
なんかあるのか?
「く… わかりました仕方がないですね」
クッ 殺せ!とか女騎士みたいに言うかと思った。
ドキドキ…
妖狐さんは携帯をしまうと俺を見つめた。
「賢治さん、メガネに出てると思いますが上にモンスターが出現したみたいなのです」
いつもになく真剣な顔で妖狐さんは告げた。
これが愛の告白だったらどんなに嬉しい事か…
まあそんな事はないのであるが。
しかし、異世界ロールプレイも段々とそれらしくなって来たな。
すごい演技力だ妖狐さん!
「このまま上に行くと襲われますから準備をしましょう」
妖狐さんはそう言うとバックから何かを取り出した。
「そのままだと危ないですからこれを付けて下さいね」
そう言って見せてくれたのは少し大きめのゴーグルだった。レンズが黄色で周りは革張りのレトロ感のある渋いデザインだ。
しかしこれを付けて展望台をウロウロするのはちょっと恥ずかしいのだが…
そう思っている俺に今付けているメガネを外し問答無用でゴーグルを装着させた。
「どうですか?見えますか」
おや? ゴーグルなのに前だけでなく側面も見える。何も付けていない様な視界だ。
「これゴーグルですよね?すごい良く見えますね」
「はい、我が社特製の冒険者用ゴーグルです!」
ポロン!
(賢治は冒険者のゴーグルを手に入れた!)
おおう、表示機能はメガネと同じか。
いやメガネよりも何か情報が多いな。
視界の右側にはマップの様な絵が出ている。左側にはコジマケンジと書かれその下にはゲージの様な物が表示されている。
これは俺のステータスゲージだろうか?
HP 100
MP 100
YUK 530
妖狐♡ 2300
いや待て、HPとMPはわかる。
YUKは経験値として妖狐♡ってなんだよ⁉︎
特に♡がわからん!
妖狐さんラブ値か?数値も高いし…
「なんか色々表示されてますね」
「ええ、冒険者に必要な情報が表示されています」
「それと戦闘時に外れないようにゴーグル型でしっかりと装着されてますので大丈夫ですよ」
確かに全く動かない。
それどころか全然外れないぞこのゴーグル!
「ぬおおお!取れん!!」
「ああ、ダメですよロックされてますから取れませんよ」
何でロック?
「ロックですか?」
「ええ、賢治さんをお守りする為ですのでそのままでお願いします。終わったら外す事ができますから」
ぬぬ、ロールプレイでここまでやるのか。
途中で外れると進行上まずいのかな?
特に邪魔にはならないので言われるまま装着しておくか。
付けてるのがわからないくらい軽いしな。相変わらず凄い技術だ。
妖狐♡については今は聞かない事にしておこう…
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