第10話 結界解除

 妖狐さんに左腕をがっちり決められて無事に塔に続く橋を渡った。

 塔の中に入ると身体検査の場所があった。


(門番が現れた!)


 今度は門番か…

 実際は金属探知ゲートと手荷物のX線検査だな。

 観光で登るだけなのにチェックが厳しいな。

 前の人を見るとポケットの中身も全部トレーに出されている。


「厳重ですね?」


「数年前に公共の施設内で刃物を持った人が無差別に襲った事件があったです。それも数カ所で犯人も関連性もなく全く違う人が起こした事件でそれ以来この様な人が集まる所、公共の場などでは検査が厳しくなったんです」


 確かにさっきの地下鉄でも同じ様な検査があったもんな。こっちの方がいささか厳しいチェックみたいだけど。


(門番の発言!)

「お前らこの塔を攻略するのか?」


 いや、検査の人何も言って無いし⁉︎


「そんなイチャイチャしてたら命を落とすぞ!」


 そう言えばまだ腕を組んだままだ。

 てかイチャイチャって。


「妖狐さん?そろそろ離れましょうか?」


「え、あ、はい!すみません」


 妖狐さんは慌てて離れた。

 所持品をトレーに全部出す。

 携帯と財布、冒険者カード《ルームカード》くらいしか持っていないけど。


 あれ?妖狐さんショルダーバック持ってなかったか?先にX線検査に流したのかな。


 妖狐さんも携帯と財布をトレーに乗せている。その他は何も持っていなかった。


 金属探知ゲートを潜る。

 ゲートを出ると直ぐにハンディ金属探知機を持った係員が待ち構え探知機をささっと当てて検査している。


 空港並みな検査だな。


 ブーブーと変な音がしていたが問題もなく。通れた。

 続いて妖狐さんも問題無く出てくる。

 X線検査からバックを取るのかと思ったら俺の左手を取り奥に進む。


「こっちですよ」


 腕組みよりはましだが妖狐さんとの距離が微妙に近くなった気がするな。


 奥に進むとチケット売り場があった。塔の入場料を支払うみたいだ。

 妖狐さんを見るとどうぞとジェスチャーをしている。


 あ、俺が払うのね。


(徴税官が現れた)

「塔の入場は50Gだ」


 チケット売り場の人は女性なのだが何故かメガネに表示される翻訳は荒々しい。

 50Gというと俺の国の価値では約1000円になるらしい。さっき妖狐さんに貨幣価値を聞いて教えてもらった。

 入場料1000円は観光地としてまあ普通かな。


 例によってQRコードを携帯のカメラでスキャンして支払う。


 携帯に幾らチャージされているのだろう?

 後で聞いて見るか。


(徴税官の発言!)

「これは結界解除の護符だ塔で使うといい」


 渡されたのはバーコードの付いたチケットだった。

 チケット、もとい護符を受け取り更に奥に進む。


 あれ?


 妖狐さん何も持っていなかったはずなのに今はショルダーバックを肩から下げていた。

 支払いしてる間に取って来たのか?

 不思議に思いながらも再度妖狐さんに手を引かれて駅の改札口みたいな所に来た。


 ポロン!

(結界が張られて前に進めない)


 おおう、結界と来たか。

 成程それでこの護符で結界を解除するのね。

 貰った護符の一枚を妖狐さんに渡す。

 バーコードを読み取る所があったのでそこに護符にあるバーコードを当てた。


 ピ!


 音が鳴り改札口から現地の言葉でアナウンスが流れている。


(結界が解除された!)

「冒険者賢治よ!新たな扉が開かれた。汝らの冒険に幸あれ!」


 メガネに翻訳が表示されるがお馴染みのロールプレイ翻訳だ。


 いや、塔を登るだけなんですが… なんかちょっとドキドキしてきたな。


 開かれた改札口のゲートを通る。

 そのまま奥に行くと大きめのエレベーターが2基並んで有った。

 ここから上に上がるらしい。

 エレベーターの前にかわいい制服を着た人が立っていた。


(転送装置案内人の発言!)

「塔の上空へ転送しますのでお待ちください」


 転送装置なの?

 本当にそうなら凄いな…


 そして翻訳の口調がやさしくなった。

 やはりだれかメガネを通じて状況を見てるな…

 まあ、こんな可愛いエレベーターガール?に荒い口調で言われたら違和感が半端ないよね。

 エレベーターガールなんてあまり見ないので新鮮だ。


 ん?


 何か視線を感じて横をそっと見たら妖狐さんがなんかプリプリした感じで俺を見ていた…


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