第5話 異世界へようこそ!
(おねーさんの発言!)
「これで小島賢治様はF級冒険者になりました」
いや、ぜったいそうは言ってないだろ?翻訳の脚色が激しい…
妖狐さんを探すと隣でポニーテールのおねーさんからカードを受け取っていた。
妖狐さんもここに泊まるのか。
(おねーさんの発言!)
「あの方は凄腕の冒険者なんですよ」
妖狐さんも冒険者に…しかも凄腕とは。
「賢治さん登録終わりましたか?」
「はい、冒険者になりました!」
「おめでとうございます!これでこの世界を冒険できますね!」
満面の笑みで喜んでくれた。
「妖狐さんのカードを見せてもらってもいいですか?」
「いいですよ、はい」
S1801
数字は同じだが頭文字が俺はFで妖狐さんはSだ。
これはもしかして…
「もしかして妖狐さんはS級ですか?」
「よくわかりましたね、そうなんですよ~」
なんか、このホテルもこの企画に協力しているのかな?
「それではお部屋に行きましょう」
妖狐さんに着いて行きエレベーターへ向かった。
1801だから18階のフロワだ。
ポーン
エレベーターが18階に到着し降りる。
あれ、FとSの違いはあれど部屋番号は同じ1801だな… どういう事だろう?
まさか同室とか⁉
妖狐さんと一緒に部屋へ向かう。
ほどなくしてドアに1801と書かれた部屋がありカードをドアに当てて開錠し中に入る。
広いな…
何やら普通のホテルの間取りと違う気がする。奥に進むとリビングがありそこに荷物が置かれているのが見えた。
俺の荷物だけじゃない…
やはり妖狐さんもこの部屋なのか!
「ちゃんと荷物も来てますね」
「そ、そうですね…」
「あの… 妖狐さんもこの部屋なんですか?」
「はい、そうですよ」
妖狐さんは至って普通に答えた。
「え、でも、まずくないですか?」
「大丈夫ですよ、アパルメントのお部屋ですから」
アパルメントとはなんぞや?
「アパルメントとはなんでしょう?」
「ああ、すみません。ご存じ無かったですね、こちらの世界では長期滞在する人が多いので長く泊まれるようにお部屋が整っているのです」
あれか?マンスリーマンションみたいな感じかな。
「こちらへどうぞ」
入り口の横にある小部屋に連れて来られた。
そこには台所が設置してあり電子レンジや食器、フォークやナイフなどが置かれていた。
「ここで自炊もできるようになってます、そして… こちらにどうぞ」
奥の右側にドアがあり妖狐さんはそこに自分のカードを当てた。
ピ!
ドアが開錠しドアを開ける。中に入るとベッドルームと横にバスルームがある部屋になっていた。
おお、バスルームまで二つあるのか。
「なるほど、部屋が分かれているんですね」
「はい、この方がこちらでは何かと便利ですから」
ふむふむ、俺の部屋は… 鍵は着いていない。
「あ~ 俺の部屋には鍵はないんですね?」
「こちらが主な部屋になりますからリビングも近いですしね、大丈夫ですよ襲ったりしませんから」
カラカラと可愛い笑顔で笑う妖狐さん。
寝室は別とは言えこんな可愛い人と一緒に過ごすのか… 襲われてもいいかも♡
「夕飯まで少し時間がありますからゆっくりしててください。お茶をいれますね」
「はい、ありがとうございます」
リビングのソファに座りTVをつけてみる。
何やら可愛げな娘がザリガニみたいなのをありえない量を食べている映像が映っている。
大食い系の番組かな?
あれ?そう言えばメガネの翻訳が発動しないな…
TVの画面は出来ないのかな。
リビングには4人掛けのテーブルもありそこで妖狐さんがお茶を用意している。
なんだかほっこりするな。
結婚して一緒に住むとこんな感じなのだろうか…
いや、その前に仕事を探さないとな。安定した職に就いて幸せな家庭を…
「賢治さん、お茶はいりましたよ~」
は、いかんいかん。妄想が暴走してしまった。
「は~い」
テーブルに行くと蓋の付いた湯呑が置かれていた。
テーブルに座って蓋を開ける。
何は少し茶色いがかった茶葉が漂っていた。
「これは茶葉がそのまま入っているんですね?」
「ええ、茶葉を発酵させた物になります。一杯目は流してしまって一番美味しい2杯目を入れてあるんですよ」
ほー、緑茶とは違い香はあまりない。茶葉が浮いていてちょっと飲みにくいな。
「その蓋を少しずらして隙間から飲むといいですよ」
そう言って妖狐さんも席に着いて飲んで見せた。
蓋を少しずらし起用に飲んでいる。
左手で湯呑み、右手で蓋を押さえて飲む姿は何とも可憐だった。背筋がピンと伸びスタイルの良さが際立つ。
思わず見惚れる。
「賢治さんもどうぞ」
「あ、はい頂きます」
同じ様に真似をして飲んでみる。
「はふ〜 美味しいですね」
発酵させているからかしっかりと味があり紅茶と緑茶の間な印象だ。色は薄い黄色、いや金色だな。
「これが本場のお茶なんですね〜」
「ええ、こちらのお茶は様々なお茶があるので色々飲んでみるのも良いですね」
ふむ、このお茶といいチェックイン時の時といい俺の国では無い事だ。
「こちらではチェックインの際に顔写真を撮られるんですね?」
「冒険者登録ですね、そうですね賢治さんの世界ではあまり無い事ですね」
街並みや人の姿はあまり変わらないが言葉も通じないし確実に俺の国とは違う世界だな…
「異世界ですね」
妖狐さんは手にした湯呑みをそっと置き希望に満ちた笑顔で応えた。
「異世界にようこそ!」
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