第4話 冒険者

(おやじの発言!)

「できたぞ、15Gだ!」


 15G? 新しい通信規格か?


「賢治さん、先ほどお渡ししました携帯で支払ってみてください」


「そういえば渡されましたね」


「この世界ではほとんどが電子決済になっており携帯を使って支払うのです」


 ほほう、ほとんどが電子決済とはちょっと進んでるな。


「その携帯にあらかじめチャージしておきましたので露店に掲示しているQRコードを携帯で読み込み込んで下さい」


「ふむふむ」


「携帯に金額を入力する画面がでますので15と入れてください」


 15ね、ほいほい。


「パスワードを聞いてきますのでパスワードは 175169 です」


 ふむふむ175169… いせかいりょこう か!

 徹底してるな…

 パスワードを入れてみる。


 ピン!


(おやじの発言!)

「おう、まいどあり!もうすぐできるぜ」


 世界的に電子決済が流行ってるけどこんなに簡単に支払えるなら流行るよな。


(おやじの発言!)

「できたぜ!持って行きな」


「あ、どうもありがとうございます」


 おやじは眼鏡を見てニカっと笑った。


「妖狐さん買えました!」


 まるでTVで見た初めてのお使い!

 俺は大人だがな!


「タータタッタ、タッタッター」


「賢治はおやじを攻略した!」


 また、妖狐さんがアナウンスしている…


「賢治は経験値10YUKが入った」


「ワイユーケー?」


「ヨウコですね…」


 ちょっと恥ずかしそうな妖狐さん。


「この企画は私が発案者で開発が面白がって経験値の単位に私の名前を付けたんですよ」


「なるほど経験値10YUK《ヨウコ》ですか」


「はい…」


 恥ずかしがる妖狐さんも可愛い。


「それで?これが貯まると何かあるんですか?」


「ある一定貯まるとLVが上がる!」


 おお!


「気分になります」


 気分かーい!

 まあ、海外でいろんな事をすれば人生の経験値は上がるよね。そう言う事にしておこう。

 もう、ロールプレイとして順応して行こう…


「あ、妖狐さんの分も買いましたからどうぞ」


「え?」


 あれ、ダメだったか?


「食べる!」


 お、おう。本当に油揚げ好きなんだな。

 妖狐さんは嬉しそうに焼き包み油揚げバージョンを受け取る。


「それでは、むぐむぐ。これから、モグモグ。宿に向かいましょう。ゴクン」


 妖狐さんはめっちゃ食べながら予定を聞かせてくれた。

 俺も負けじとがっつく。意外にうまい。

 甘辛の香辛料がしっかり聞いた味で油揚げは油通ししたのかさっくりしている。

 機内食はシャンパン飲んで寝てたので食べられずちょうどよかった。


「お腹も満たされたので行きましょう賢治さん」


 よっぽど美味しかったのか妖狐さんの顔がツヤツヤしているように見えた。


「荷物は先行して宿に届いているのでこのまま歩いて向かいます」


 歩きか、異国の街をゆっくり見れるな。


「着きました、こちらになります」


 早いな、おい!


 空港に隣接しているホテルだった。

 立派な入り口から中に入る。

 妖狐さんと一緒にフロントに行く。まだ少し早い時間らしく他の客は居なかった。

 フロントには二人の女性が立っている。

 一人は小柄で若く見える人ともう一人は俺と背は同じくらいで痩せ型のポニーテールの子だ。


「デロデロリン〜」


「受付のおねーさんが現れた!」


 妖狐さんがすかさずアナウンスをする。


 これ毎回やるのか?

 と言うか妖狐さんじゃ無くてもメガネに表示すればいいんじゃないのか?


「これ毎回妖狐さんがやるんです?」


 純真無垢な笑顔で妖狐さんは言った。


「サービスです!」


 クッ! 笑顔が眩しい!

 このサービスに信念がある顔だ!

 仕方がない会えてこのサービスを受けよう…


 ん?


 良く見ると妖狐さんの顔と耳が少し赤くなっている。やはり本人も恥ずかしいのか!

 ガイドさんも大変だな…


(おねーさんの発言!)

「いらっしゃい、ここは宿、銀の羽亭です。本日はお泊まりですか?」


 いや、どう見ても現代的なホテルなんですけど?

 翻訳も異世界仕様なのか?


「あ、はい。宿泊です」


 若い受付の娘は俺をじっと見つめる。

 メガネに翻訳表示された文字を見ているのだろう。

 わかってはいるが見つめられるとちょっとドキっとする。


(おねーさんの発言!)

「それでは身分証を見せて下さい」


 身分証?ああ、パスポートの事か。


 パスポートをおねーさんに渡す。

 おねーさんはパソコンを前にチェックする。


(おねーさんの発言!)

「小島賢治様ですね、それでは冒険者の登録を行いますのでこちらへ」


 冒険者って何よ? 宿泊って言ったよね?

 翻訳が段々とゴリ押しになってきたな。


 おねーさんが見慣れない機械が置いてある場所に案内した。小さなモニターと下にはスキャンする様な物があった。


(おねーさんの発言!)

「登録を行いますので画面を見て下さい」


 モニターを見ると上にカメラがあった。

 おねーさんが下のスキャナーにパスポートを裏返して置くと画面は俺の顔が写し出された。

 画面には俺の国の言葉でそのままお待ち下さいと表示されている。


 ピ!


(おねーさんの発言!)

「お疲れ様でした。登録が完了しました冒険者カードをお渡ししますのでこちらへ」


 え、本当に冒険者になったの?


(おねーさんの発言!)

「こちらをどうぞ」


 渡されたカードを見ると数字が書いてあった。


 F1801


 部屋のカードキーじゃねえか!

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