第4話 魔荒都市 ダルク・マート Ⅲ
おそらく祭壇があったであろう場所にたどり着いた。
魔術的なエンブレムが、破壊されてはいるがあちらこちらに散らかり、そして地下へつながる階段もあったしきっとここだろう。
入口は簡単に見つかったが、簡単には入らせてもらえなさそうだ。
「入口に一人見張りがいるって事は中にもいるだろうな」
あの美人の言っていた通り、警備がいる。
しかし野盗が一つの場所に留まるなんて珍しい、普通は退治されないように移動を続けるもんだけどな。
「あれが野盗の見張りですか」
ナナシムは変な顔をしているが、野盗を見るのは初めてじゃないはずなのに……ついにエラーでも起きたのだろうか。
大きな階段の入り口に腰掛けている野盗の横はすり抜けられそうにない。
「すり抜けるのは難しそうだな、気絶させるのならどうだ?」
「それなら問題大丈夫そうです、私がやりましょうか?」
「任せる、頼んだ」
流石に俺の目の前で殺したりはしないだろう。
気絶させるって話もしていたんだ、彼女に任せても大丈夫のはず。
ナナシムが足音を消して瓦礫の上を歩く。
俺でも音を立てずに移動ぐらいできるが、あの速度では無理だ。
そう思える速度で野盗の背後を取り、頭を掴んだ。
「もう大丈夫です」
頭に電気でも流し込んだのか、何をしたのかは考えないようにする。
とにかく道は開けた、この結果が大事なんだ。
倒れた野盗を瓦礫で見えない場所に運び、中に入った。
広く、暗い螺旋階段をおりると広い部屋に出た。
部屋の奥には本が一冊厳重に置かれているが、野盗は一人もいなかった。
俺達が上の奴を気絶させたのがバレて待ち伏せしている可能性もある、ここは慎重に進むべきだ。
「ここから別の部屋に繋がっているのか?」
「あの奥、本のある場所の後ろには一つ部屋があります。人らしき反応も二つあります」
俺達人間には見えなくて、感じない事でもナナシムなら見て、感じ取れる。
こういう時程心強い事は無い。
「トラップはなさそうだが、一応警戒しろ」
外とは違って整備と手入れのしっかりとされた部屋をまっすぐに進む。
いきなり襲われてもすぐ対応できるように武器を握り目的に近づく。
そして、本にたどり着いた。
本には鎖が巻かれ、鎖は床下に繋がっている。
これを引っ張ればおそらく、後ろの二人にバレる仕掛けなのだろう。
しかし、たかが本をここまでして保管する変わった野盗がいるとはな。
「思ったより頑丈な鎖だ、細工は難しそうだし、後ろの奴らを片付けてから外したほうが良さそう」
「誰だッ!」
本に付いた鎖を調べていた隙を見てなのか、男が奥の部屋から出てきてしまった。
これはまずい。
「こんにちは、そしておやすみなさい」
俺の隣にいたナナシムは、男の真後ろに立っていて、男の腹からナナシムの腕が突き出ていた。
「お前らみたいな野盗に……あの本は…」
「えい」
左手は腹の中から、右手は頭から、上下の手を叩くようにすると嫌な音を立てて男は肉塊へ変わっていった。
一人殺してしまったのだから、もう一人も殺して目撃者がいないように、俺達がやったという証拠を残さないようにしないといけない。
だから、殺しはしたくなかったんだ。
「一人も殺さないか、全員殺すか、今回は二人だからまだいいか」
奥の部屋はこの部屋にしか繋がっていない、残りの野盗は袋のネズミだ。
……あ、殺すなら上の奴も殺してここに持ってこないとな。
「では私が奥をやりましょう。女の子ですから重い遺体は持てませんので」
上で殺した遺体を運ぶのを嫌がって俺に押し付けて来やがった。
「じゃ、ちょっと殺してくる」
「はい、私ももう一人殺してきます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます