第3話 魔荒都市 ダルク・マート Ⅱ
「すいません」
紙に書いてあった場所を見つけるのに少し時間がかかったが、なんとか見つけ出して扉を叩く。
どのような仕事なのかは分からないが、とにかく話を聞いてみたい。金を稼ぐ手段のアテは、これしか無いんだから。
「はーい、はいはいはーい! 今出ます」
中から女性の声がして、扉が開く。
「えっと、どちら様ですかぁ?」
三つの髪飾りを身につけ、いかにも魔法使いらしい金色に輝く杖を手に持った女性が現れた。
茶色の長い髪、スタイルもいい、俺に性欲があれば邪な考えが浮んでいただろう。
一言で言うなら、美人だ。
「これを見まして、仕事を頂けるのではと」
ナナシムが紙を取り出して女性に渡す。
美人さんは『あーっ、来てくれたんだ!』
と、オーバーなぐらいにリアクションを取り、部屋の中に入れてくれた。
「実は魔法実験に必要な物が足りなくて、探してきて欲しいのです。場所は分かっているのですが、野盗が屯していて私では取りに行けなくて」
野盗なんて珍しくない、強さはピンキリだが大体は弱いのが多い。
魔法使いなら野盗ぐらい簡単に倒せそうな気がするが。
「街の北部、旧祭壇の地下に本が一冊だけ祀られていると思います。それを持ってきて下さい」
本を取ってこい、か。
簡単そうで難しい仕事だ、もし本が警備され、守られていたのなら無理矢理奪い取るしか無いだろう。
盗むだけなら簡単なんだが。
とにかく、状況によって難易度が全然違ってくる。
「わかった、やるよ」
だが、専門的な知識が必要な仕事でも無い。
俺達にできるこれ以上の仕事はそう簡単には見つからないはずだ、
「報酬はダルク金貨を三十枚です。それと一応保護の魔法をかけさせて下さい、きっと役にたちますから」
体が一瞬光り、魔法がかかった。
保護の魔法らしいが、身体を強化したり守る魔法は使ったことも使われた事も無いので、変な気持ちだ。
「行きましょう」
ナナシムに言われ、家の外に出る。
彼女は魔法に耐性があり、攻撃魔法も保護の魔法も、何もかもを受けつけない。
あの感じからすると、あの美人はそれに気づいていない、よかった。
「北部って、丁度荒れてる場所だな」
「ですね、私一人で行きましょうか」
「バカ言うな」
ナナシムが一人で行けばきっと皆殺しにするだろう、だから、俺も行く。
「盗むのが理想だ、無理そうなら全員片付ける、それでいいか?」
「従います」
北部は本当に荒れていて、まったく復興が進んでいないようだった。
途中視線を感じたので、よそ者が来たともう噂されていると思って間違い無いだろう。
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