第2話 魔荒都市 ダルク・マート
空が暗くなった頃、ようやく街にたどり着いた。
歩く生活に慣れたとはいえ、疲れは慣れない。
「おんぶしましょうか?」
「バカ、それよりもいつも通りに頼むぞ」
街の入口には兵士らしい格好の人間が二人、駄弁りながら立っている。
身分証が取りだしやすい所にあるのを再確認し、ナナシムにも用意させる。
「一応確認するぞ、俺とお前は姉弟で旅をしている、この街には食料の補充の為に寄った、そして」
「私が機械人形である事は黙っておく、ですよね。姉にメイド服を着せるなんて、随分趣味のいい弟ですが」
俺がどれだけ着替えろと言っても聞かないくせに、こういう時には変な事を言ってくる。
本当に調子のいい奴だ。
「止まれ」
入口の近くで兵士が俺の前に出てきた。
次に言われる事は分かっているので、準備しておいた身分証を取り出して兵士に見せる。
「姉弟で旅をしています、食料が切れたので補充したくて寄りました」
「どこを目指しているんだ」
「ファスタニアを目指しています」
ここから遠い、遠い場所にある星の首都と呼べる場所、ファスタニア。
そこに行けば、母の残したこの手紙の意味も分かるとナナシムに言われ、俺は旅をしている。
「随分遠いな、昔みたいに電車や飛行機があれば半年でたどり着いただろうに。ここにはテレポートの魔法が使える魔法使いもいるから、頼ってみるといい……金があるなら、だがな」
「貴重な情報、ありがとうございます」
「ようこそ、魔荒都市 ダルク・マートへ」
ナナシムと二人で頭を下げ、入口から中に入る。
せっかく再確認したのに、俺しか話してないじゃないか。
『喋らない事もアクセサリーなんです』
前に言っていた事を思い出し、ため息が漏れる。
この街、魔荒都市ダルク・マートは崩れている場所こそあれど、比較的整備されている街だと言える。
魔法と科学が入り混じるこの時代に、機械人形には使えない魔法のみを使うこの街からは、人類の街だと強いメッセージを感じる。
「食料が切れそうなのは本当だし、まずは買い物に行くか」
しかしどこで食料を買えるのかまったく分からない。
広い街だから、下手に動き回って治安の悪そうな場所には行かないようにしないと。
戦いは……ナナシムに教えられたから、苦手では無いけれど、むやみに戦うのはバカのやる事だ。
人が多い場所を進んで行くと、この街の異常に気がついた。
物売りや飲食店はあったが、値段を見るとそのどれも貨幣が違う。共通貨幣ではなく、この街でしか使えない貨幣があるらしい。
「このままでは買い物も宿を取る事もできません、まずはここで使える通貨を手に入れましょう」
まず俺達は金を稼ぐ事にした。
何をするにも金だ、金がいる。
ここで稼げる仕事を探さないといけない。
「ナナシム、これ見ろ」
まだ新しい紙が落ちていた。
そこには。
『仕事の手伝いをしてくれる人募集、給料は応相談!』
と、書かれていた。
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