解除の旅 Reunification

ふぇりか

第一章 Controller

第1話 旅の始まり


 

 昔、戦争があった。

機械と人類はお互いの生きる場所や権利を守る為の戦争。

結果、人類は敗北した。

 

それから人類は様々な当たり前を奪われ、普通の暮らしは恵まれた、一部の人類のみが享受できる物になってしまった。

きっと不自由は俺達の一番の隣人だろう。

不自由から逃げる為、救われる為、今日も人類同士で争いを始める。

 

「相変わらず暗いな」

 

瓦礫と言えば瓦礫。

廃墟と言えば廃墟。

どちらとも取れるような場所から空を覗く。

 

薄ぼんやりした日差しだが、寝起きの俺の目を眩ませるのには十分だったようで、目と頭に少し痛みを感じる。

 

「今日はこのまままっすぐ行けばいいんだっけ」

 

俺の近くに駆け寄るメイド服を着た少女に道を確認する。

彼女は少し考えるフリをして、ビシっと音がなりそうなぐらいまっすぐに俺の視線の先の道を指差した。

 

「はい、こっちです」

 

ニコニコと笑う彼女はリュックから一枚のパンと水を取り出して食事をするように言ってくる。

 

「朝食は体を動かすのに必要ですから」

 

「腹減ってないんだけど」

 

断ろうとしたが、一度言い出すと絶対に曲げない彼女の設定を思い出し、美味しくないパンを水で流し込む。

 

「私も食べたいです」

 

彼女は人間ではない、機械だ。

何故俺に従うのか。

いつから俺の側にいるのか。

何故俺を守るのか。

何もかもが不明な機械人形の女の子。

 

「食べてもいいぞ、ほら」

 

ちぎったパンの一部を差し出したが、笑って突き返される。

 

「いじわるしないでくださいよ、むぅ」

 

「悪かったよ、ナナシム」

 

唯一分かっているのは、彼女の番号。

"SO7746"

この番号だけが彼女について分かってる事だ。

 

俺が彼女に関する事を聞いても答えてはくれない。

命令しても反応しない。

力づくで聞き出そうともしたが、俺じゃ勝てなかった。

 

「そんじゃ、行くか」

 

「武器やお金の忘れ物はありませんか?」

 

子供の頃から毎回言われ続けたセリフを聞き流し、道に戻る。

荒廃した道と町。

ここには昔人が沢山住んでいて、戦争でここまで破壊されたのだとナナシムから聞いた。

彼女が戦争で戦っていた可能性もあるが、それについても答えてはくれない。

 

「もう子供じゃないんだから、ほら、放ってくぞ」

 

「あっ、待ってください」


まっすぐ道を歩く。

街はまだ見えて来ない。

こういう何も無い時、決まって考える事がある。

次は何を解除しようかな……と。

 

「次、どうすっかな」

 

きっとまだ金が足りないだろう。

不自由が減れば減るほど、解除の料金は上がっていくからな。


「次は性欲を解除してみてはどうですか? 人類の三大欲求ではありませんか」

 

「三大欲求なら食欲の方が先かな、腹が減って頭が回らなくなるから食べる。 それ以外の感情でご飯を食べてみたいんだ」

 

ナナシムがその時は頑張ってご飯を作りますと張り切っている。

彼女の手料理か、一体何が出てくるのだろうか。

 

「楽しみにしてる」

 

くだらない話をしながら道を進む。

遠くに街が見えてきた。

 


 

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