夢であった君と本屋で、

鯵の閉まり

第1話

夢..........それは一般的に記憶の整理と言われることがあるが、人の理想が仮想的に表しているものとも言える。

ヒーローになった私、空が飛べる私、たまには

皆からモテモテになった私などなど人の“理想”及び望みも夢にしばしばでるものだ。


続いて本はどうだろうか。

私は本も夢とあまり変わらないと思う。

本というものは、人の理想が紙に表面的に表しているものだと言える。現実ではあり得ないドラゴンを倒したり、実際にあった出来事のような文学的な物語まで、人の理想がたくさん詰まったのが本である。


そんな本がたくさん収納されている“本屋”を私は

“人々の理想の倉庫”と呼びたい。夢がたくさん詰まった人の脳も理想の倉庫と呼べるだろう。


そこで、私はこう思った。

夢(人の理想)≒本(人の理想)ではないかと。

もちろん違うかも知れないが、少なくとも自分の短い間で思いつたことだ。


夢は途中で打ち切れるものだ、理想の中の私の“最後”を見れないことだってしばしばある。

だからこそそんな時は私は、本屋に答えを探しに行く。きっと私の理想もこの本屋にあるかも知れないと思うからだ。


その答えが分からなくとも人の理想を共感できることがまた楽しい。本というものは、理想を分かち合うことができる一種のツールでもあるのだ。

                      』

という本を読んだ僕はその日の夜、夢で1人の女性に一目惚れしてしまった。

本屋の中の出来事なのだが、僕の隣に立っていた人が本を一冊僕の方に落とした。

なぜだかその時、すぐに反応することができた。


それを手に持ち、顔を上げるとその人が女性であることが分かった。

僕は腰を上げて、あの.......これとボソッと言う前に

その女性は僕のことに気が付いた。


「あっごめんね落としちゃった、ありがとうね」


彼女のニコッとした笑顔に僕は一目惚れをしてしまった。今まで見たことないほどの、他要素なんてどうでも良くなる程美しくて可愛い笑顔だった。まさに、僕の理想を体現していた。


そう言われたところで僕は夢から起きてしまった。

あの人ともう会えない。そう思うと漠然と悲しさと

もう一度夢に戻って会いたいと思う気持ちが湧き上がってきた。


その時あの本を思い出した、「あなたの夢の答えは本屋にある」と。


何故だかいるはずもない、根拠もないのに衝動的に外に出る準備をした。

それくらい、あの彼女に会いたかったからだ。

夢から覚めた僕は彼女のあの笑顔を鮮明に思い出せなくなってしまった。1番思い出したいものが思い出せない。段々とその夢の思い出一コマ一コマが虫食いのように削れて僕の記憶から離れていく。しかし笑顔が美しくて仕方がなかったのは忘れることができなかった。


僕は急いで朝ごはんもなしに夢での本屋さんに向かう。


「いらっしゃいませ〜」


夢では女の人だったような気がするが男の店員さんのようだ。


僕が読んでいた、雑誌の棚に向かった。

もしかしたら会えるかも知れない、そう思ってしまう自分がいてドキドキが止まらない。


期待を持ち、その本棚に立った........


誰もいない。


やっぱり、いなかった、そうだ、そうだよな、夢は夢だ。いるはずがないものを期待して残念がってどうするんだよ。

僕は誰にも見えない端っこの方で俯いていた。

この本屋に、あの彼女に、君に、会いに来たのに。

ダサくても、どうだっていい。少し悲しみたかった。


「ねっ君、」


急に誰かに呼ばれて、振り向きたかったがその前に目を服で擦ってから向いた。


その瞬間驚いた。

「あなた......は」


「君........夢で見てさ、ちょうどここで泣いてたんだよね、そう思ったら朝からなんだかいてもたってもいられなくて、来たら君が」


奇跡だろうか、僕があったあの笑顔の彼女だ。

そして、今も僕をその笑顔で慰めてくれている。


「あぁ.....また泣いちゃってる」


「ぼ、僕も実はあなたのこと......夢で見て会いたくてここに来たんです」


「えっ!?そ、そうなの?本当?」


「は、はい」


「じゃあ.......運命、だね?」


これが僕の夏の運命の出会いだった。

それから、彼女とは交際を始めて僕は今とても幸せに過ごしている。

夢であった君と本屋で.........】


という本を読んだ俺、次は俺の番かもしれない。

だとしたら幸せな夢を見たいなぁ。


そして、この本を読んだ次はあなたの番かもしれない。

あなたは、今夜どんな夢を見たいですか?。


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夢であった君と本屋で、 鯵の閉まり @ajikou

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