a1




「はぁ、あの子大丈夫かしら?」


私の名前は大星絹枝おおほしきぬえ。会社勤めの子持ちのOLだ。


「なんかあったんですか?先輩。さっきから手が動いてませんけど...」


そう話しかけてくる後輩の言葉に、私はうぐっ、と手を止める。いや、元から手は止まっていたのだけれど。


「いや、ね。その。実は、うちの子が今日風邪をひいたみたいで学校休ませたのよ。ちょっと大丈夫かなって思って...」


そう話しながら私は、うちにいる風邪をひいた私の子供、大星出雲おおほしいずもを思い出していた。


「ああ、なるほど。それは心配ですよね。それなら、今日はもう上がりますか?部長には私から言っておきますけど...」


「大丈夫よ。さすがにそこまでしたら迷惑がかかってしまうもの」


それでもこちらを心配している顔で見てくる後輩の優しさに少し癒されながら、昼休憩に移る。


食堂に食べに行った同僚が多いおかげでほぼ貸切状態になっているこのオフィスで、私たちは二人でお弁当を食べ始める。


_____チーン


音が鳴った。エレベーターの到着音だ。私が目を向けると、そこは課長が降りてくるところだった。


「き、君たち!今すぐ、逃げなさい!!」


「え?」


切羽詰まった声で避難を促す課長。しかし、何かがおかしい。たぶん、隣の後輩もそれを見て思わずえ?という声が出たのだろう。そんなことを思っていると、突然課長が苦しみだす。


「あ、あ"あ"あ"。やだ。僕まであいつらになりたくなぁい。ああ、あああ!!」


頭を手で掻きむしっていた課長が、机に倒れ込んだ。そこに、後輩が近づいていく。なぜか、本当になぜか、がした。


そしてそれは、現実となった。


「課長、どうしたんですか!?大丈夫ですか!?先輩!これって救急車呼んだ方がいいですかね!?」


ごきゅり、と後輩の首元から音がした。え?と後輩が疑問を抱く暇もなく、課長は首の肉を食べ始めた。


「あ、かちょ、何をしてるんですか?え?せ、先輩、助けてくださ…」


手を伸ばしてくる後輩。たぶん、声を出したいのに喉を食われて声を出せないのか、口をパクパクと動かしている後輩。


そして、恐怖で動けない私は、この光景を、後輩の動きがとまるまで見続けていた。


ふと、課長と目があった。体を赤黒い血で濡らし、その口元は後輩の血で真っ赤に染まっていて、生気のない、されど真っ赤に充血している瞳に睨まれる。


ペタリ、ペタリと課長が迫ってくる。ゆっくりと、でも、確実に。


このまま私は食われるのだろうか?それは、それは…子供たちを守るはずの母親として、そんなことがあってもいいものなのか。


課長、いや、もう課長ではない。やつだ。やつはもう、目の前にいた。少し手を伸ばせば届きそうな。


私は気を取り直して、すぐに走り出した。助けを求めるために、エレベーターへと。


その時、チンと音が鳴った。誰かが登ってきたらしい。よかった。これでエレベーターを待つ時間がなくなった。


そんなことを考えていた私は、一瞬で幻想を打ち壊された。


「え…?なに、これ?」


‥…………………………………………………


先日,歴史の授業があったんですわ。で、そこでキング牧師を問う問題で、僕が指されたんですよね。で、僕答えられなくて、クラスメイトと教師から、「え?知らない?常識だよ」って言われたんですよ。キング牧師って常識なんですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

RTA 実績、避難所 まるべー @marub

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る