第5話 筋肉とケンサク

 やほっ、本屋で働くケンサクでっす。


 ん、タグちゃんたち、集まって何してんの?


 へえー、レスリング大会してんのか。面白そうだね。


 いや、俺はいいよ。俺は見てるだけでいいから。


 いやいや、遠慮なんかしてないって。俺はほら、頭脳派だから。


 やめろ! 押すなって、俺、頭脳派で、筋肉はないからっ。


 えええええ、『タグ・バトル』ちゃん相手、って、そりゃ絶対無理!


 ムリムリムリっ、逃げるな、って言われたって、そりゃ逃げるよ!


 そんな戦闘オタク……いや、戦闘の専門家さま、なんかと、レスリング出来ないよ。無理っ。


 せめて、他のタグちゃんにしてくれえっ。


 えっ、『タグ・主人公最強』ちゃんだって?! いや、それも無理っ。


 そんなチート野郎……いや、ちーぃっと強すぎるタグちゃんは、とても無理っ。


 げっ、『タグ・闘士』ちゃん、って、それも無理だって、わかるだろ!


 そんな筋肉至上主義男……いや、素晴らしいマッスルなお体には、触れることすら無理っ。


 さっきから言ってるだろ、俺、頭脳派だから、筋肉ないんだって。


 俺と同じで、筋肉ついてないヤツにしてくれよ。


 どわっ、『タグ・ロボット』ちゃん、って、違う、ちがーうっ。


 筋肉ついてない、って、そういう意味じゃない!


 おまえら、わかってて面白がってやってるな。


 ひゃーっ、こいつ追いかけてくるぅぅ――。


 誰か、誰か、こいつのスイッチ切ってくれ!


 えっ、なんで? なんでみんな並んで一緒に走んの?


「トップランナーは渡さない!」って、『タグ・スポーツ』ちゃん、それ、間違ってるから。俺、逃げてるだけだからっ。


「ハハハハハハッ、夕日に向かって走れ!」って爽やかに笑って、『タグ・青春』ちゃん、あんたも絶対、勘違いしてるって。


『タグ・高校生』ちゃんも、『タグ・ラブコメ』ちゃんも、『タグ・学園』ちゃんも、嬉しそうに一緒に走ってないで、あいつのスイッチ切ってくれよ――っ。


 あああっ、そっか、こいつら、脳筋のうきんかっ!!


 筋肉あるのも、筋肉ないのも、脳筋のうきんも、もうこりごりだよ――――っ。

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