第27話 鶴丸家➆
鶴丸家➆
今日は保護施設から犬が来るという。
動物好きの周太郎は犬が来るのを楽しみにしていた。
「ただいま!犬来てる?」
靴を脱ぐのももどかしくチーのいる部屋に周太郎は飛び込んた。
「え?コイツ?」
楽しみに帰るとそこには年取った、毛もパサパサの大人の犬がいた。
「子犬じゃないの?なに、この老けた犬。ペットショップでカワイイ子犬買った方が良かったのに。」
「何言ってんの。年増だけどチーちゃんはすごい美人でしょ。それに保護犬を受け入れることはいい事なの。支払うお金も安いしね。」
チーは周太郎の言葉にムッとした。
「なによ、頭の悪そうなガキ!」
ケージ越しにチーをのぞく周太郎に、チーはフンとした。
チーは重子が持ってきた晩ごはんを食べ、少し緊張が溶けてきた。寝転んでいると晩ごはんを終えた敏太郎、大輔、みゆきがチーを見に来た。チーの顔を見るとそれぞれカワイイねと声をかけ部屋から出ていった。
最後に部屋に来た周太郎は出せ!と暴れるザビエルをケージから出した。ザビエルは喜んで走り出ると部屋中をかけ回る。
次に周太郎はチーのケージの扉を開けた。
「お前も出てこいよ。」
おそるおそるチーはケージから出てみた。
クンクンと匂いをかぎながら部屋を探検。
一通り探検を終えて座っていたチーに動物好きな周太郎はクンクンと言いながらザビエルと共に近づいていった。
「なに?来ないでよ!」
チーは腰を上げ、二人から逃げる。しかし二人はしつこくチーに近づいていく。
「グルル、来るな!」
チーは威嚇。それでも構わず近づいてくる周太郎とザビエル。怒ったチーは思わず周太郎の鼻をガブリ。
あ、やっちゃった、とチーがひるんだその隙にザビエルはチーの背中に飛び乗ろうとした。
「お前、アタチの馬になれ!」
ザビエルはチーを馬にしようと鋭い爪で飛びかかる。驚いたチーはザビエルを振り落とし、背中から転げ落ちたザビエルはチーに首筋を噛まれた。
「あー!ザビ!」
噛まれた鼻を手で押さえていた周太郎は慌ててチーを突き飛ばした。
「ザビ、大丈夫‥?」
周太郎が心配してザビに伸ばした手を何故か引っ込めた。
「ンフフフ!」
猫も逃げ出すほどヤンチャなフェレット。手荒くかまって欲しいザビエルは大喜び。興奮で毛を逆立ててククク、ンフンフといろんなところで頭を打ちながらも走り回る。タンスの隙間に一旦隠れたもののまたニョロリと顔をだす。再度ザビエルはチーにアタック。またもや吠えられると今度も大喜びでクルクル回転しながら部屋中転げ回り、どこかへ行ってしまった。
「そうだった、ザビはこういう奴だった。」
周太郎も苦笑いしながら2匹を見守る。
「ザビエルって何なのコイツ?ここどんな家なのよ!」
チーは驚き呆れ、どっと疲れた。
夜もふけて家族皆寝静まった深夜、かすかな声がする。
「チー、起きて。起きて。」
チーは眠い目を薄く開けた。するとケージの前が薄ぼんやりと光っていた。その淡い光の中にシロガネが座っていた。
「シロガネさん!どうやってここへ?」
「フフ、アタシを誰だと思ってんの。猫又道を使えばどこだって行けるのよ。」
「サスガです!アタシ、この家でトライアルなんです。」
「当たり前よ。ここにくるようにしたのアタシだもの。アンタ、犬又になるんでしょ。トロくてたくさんやらかしそうな、この家にアンタが迎えられるように妖力を使ったのよ。」
「ありがとうございます。こんな遠いところまで。」
「フン、あの子との約束だからね。これからは新米猫又を派遣するから、その子に教えてもらうのよ。」
チーがお礼を言い終える前にシロガネは消えた。その一部始終を暗闇から2つの目が見ていた。
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