第26話 鶴丸家⑥

鶴丸家⑥

「シロガネさんのおかげでトライアルに進めることになりました。」

「フフ、良かったね。初めに会いに来た人間には断りたくなるよう術をかけておいた。今度の家の人間なら間抜けだから初心者のお前でもポイントを稼げるよ。」

猫又修行は如何に人間を苦しめるかによってポイントを稼ぐことにある。

「いいところをありがとうございます。頑張ります!」

「ウム、励め!」

そう言うと暗闇の中、自ら白く光るシロガネは一瞬で姿を消した。



今日はチーがやってくる日。重子はトヨコから教えてもらった必要なものを整えたもののこれで大丈夫だろうかと何度も用意したものを思い出していた。


ピンポン!

インターホンに金髪のトヨコの姿が映っていた。

「こんにちは、森です。チーちゃんを連れてきました。」

重子は玄関を急いで開けるとそこにはキャリーを持ったトヨコが立っていた。

「いらっしゃい!」

満面の笑みで重子が一人と一匹を迎えた。


重子はケージのある部屋に森を案内した。

「ケージはこんな感じでいいですか?」

トヨコは部屋に入るとケージ周りを確認した。

「ウンウン、大丈夫ですよ。」

ホッとしたように緊張を解いた重子の前にトヨコはキャリーを出した。

「チーちゃん、出しましょう。」

トヨコはキャリーを開け、チーを出した。チーはおそるおそる出てきたが、すぐケージの中のベッドにもぐりこんだ。


「今日はチーちゃんも新しい環境で疲れていると思うので静かにしてやってください。えさは一日2回でいいですよ。何かあったらまた連絡ください。」

それだけ言うとトヨコはチーに微笑み、帰っていった。

トヨコが帰ると重子は水を入れた容器をケージの中に置いた。

「チーちゃん、お水飲んでね。後でご飯持ってくるね。お疲れ様。」

重子もニッコリすると部屋から出ていった。


あの人がこの家のお母さん?前の家より貧乏くさい。ヤダけど、仕方ないか。

チーはフンと息を吐くと前足に顎をのせて伏せた。そしてご飯までウトウトすることにした。


カサカサ。なにやら物音がする。

チーは薄く目を開けた。なんだろう?ジッと見られている気がする。あたりを見てみるとケージから少し離れたところにチーのケージより小さめなケージがある。そのケージのハンモックから見たことのない小さな顔がのぞいている。

何、コイツ?


チーとソイツは目があった。

「お前、何?誰にょ?」

ソイツがしゃべったのでチーはビックリ。

「ア?アタシは犬よ。チワワのチーよ。アンタこそ何よ?」

「アタチはザビエル。フェレットだよ。アンタ、新入りなんだ。お兄たん帰ってきたら一緒に遊ぼう!」

ザビエルはハンモックから降りて長い体をくねらせた。こんな変な犬、見たことない。チーは目が覚めてしまった。

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