第14話 新たな世界へ⑭

新たな世界へ⑭


 次の朝、バタバタと音がしてチーは目が覚めた。ベッドから頭を上げてリビングの方を見ると、モコも目覚めてはいるがベッドでのんびりしている。モコのベッドの先、テーブルにお父さんが座り、新聞を広げて見ながら朝ごはんを食べていた。お母さんはテーブルの奥にあるキッチンで何やら慌ただしく動いていた。


昨夜、お父さんはハルカよりずっと遅く帰宅した。寝ぼけ眼でお父さんを見上げたチーにお父さんは優しげなまなざしをよこした。

「今日からしばらくよろしくな、チーちゃん。」

手のひらをチーの鼻先に差し出し、チーがお父さんの匂いを嗅いだ。嗅ぎ終わるとお父さんはチーなアゴの下から顔の横あたりを撫でてくれた。


ここの家の人たち、みんな優しい。

嬉しくなったものの、お父さんがチーを撫でるのを見てモコがまた怒るのではないかとチーはモコを見た。しかしモコはお父さんがチーを撫で終え、自分の頭を撫でるのを怒りもせずにしっぽを振って待っていた。お父さんが2階に上がると、もう仕事は終わりとばかりに自分のベッドに戻った。


あれ?お父さんやお姉ちゃんがアタシを撫でても怒らないんだ。ちょっと拍子抜け。

チーはモコが教えてくれたトイレで用を足すと再びベッドに戻った。


昨日の夜のことを思い出したチーはご飯はまだかなあ?と思いながらボンヤリとベッドにいた。すると2階からダダダッとやかましい音が降りて来た。

「遅刻だよー!」

ボサボサの頭にピンクのラインが入ったグレーのルームウエアを着たハルカが階段とリビングの仕切りを大きな音を立てて開けて駆け込んで来た。

「あ!お姉ちゃん、おはよう。あのね…」

チーは素早くベッドから飛び出し、ハルカの足元に駆け寄った。


「早くシャワー浴びて来なさい。朝ごはん食べる時間あるの?」

「ないない!おにぎり2つお願い!」

バスルームに行こうとするハルカにチーは追いついた。しかし、お母さんに抱き上げられた。

「チーちゃん、危ない。ハルカに蹴られるよ。」

「やだ!離して!お姉ちゃんとこに行くの!」

もがき暴れるチーはお母さんの腕から飛びでそうになった。

「ダメよチーちゃん。落っこちる。ケガするよ!ああーッ!」


勢い余って立っているお母さんの腕からチーは飛び出してしまった。フローリングの床に叩きつけられる。お母さん、お父さん、モコもみな目を見開いた。

あ!あ!落ちちゃう!

キャーン!

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