第13話 新たな世界へ⑬

新たな世界へ⑬


前田家の娘、ハルカが会社から帰ってきた。

「今日から新人さんかあ。」

ハルカは帰るなり、バッグを床にポンと置くとチーのケージに寄ってきた。チーが驚いて見上げているとハルカはお母さんに似た優しい声で

話しかけてきた。

「初めまして。私はハルカ。ここんちの娘だよ。よろしくね。」


ハルカはチーが怖くないようにと軽く握った拳をチーの鼻先に差し出し、チーに存分に匂いをかがせた。チーがクンクンと匂いを嗅いでいる間にハルカは母親からチーの名前を聞いた。

「へえ、チワワのチーちゃんって安直過ぎだよね。うん、うちではチーちゃんって呼ぶよ。ね、チーちゃん。」


匂いを嗅いだチーが頭を上げるとハルカはニコニコしながら優しくチーのあごの下を撫でてくれた。

それは幸せな気持ちにしてくれる柔らかくて優しい手。チーは決めた。

ハルカお姉ちゃんをアタシのお母さんにする!

ハルカのお迎えにとハルカの隣に座ってしっぽを振っているモコにもチーは宣言した。


「アタシ、アンタのお母さんなんか要らない。ハルカお姉ちゃんをアタシのお母さんにする。」

モコはハルカに頭を撫でられながら横目でチラリとチーをみた。

「そううまくいくのかな。まあ、アタシのお母さんは誰にもあげないから、どうでもいいけど。」

意地の悪い目でチー見たモコはフフンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らし、おしゃべりを始めたお母さんとハルカのそばに行ってしまった。


ベッドでチーがボンヤリしていると食事を終えたハルカがラグの上に寝転がりスマホをいじり始めた。チーはベッドから出てハルカの前に座った。前足でコリコリとハルカの手をかいた。

「ん?あらチーちゃんいたの?おいで。」

ハルカはチーを抱き上げ、ソファに座り直すと膝の上にチーを乗せた。

「かわいいねチーちゃん。甘えてくれるの?ヨシヨシ。」

ハルカはチーの頭から背中を優しく撫で始めた。

「チーちゃん、さすがロングヘアーの子だね。首元フサフサ。気持ちいい!」

ハルカはチーの首を両手で挟むとワシャワシャと撫でた。チーは嬉しさと気持ちよさでウットリした目でハルカを見た。そしてハルカの顔をペロペロと舐めようとした。

見つけた!アタシのお母さん!

チーの甘えた声にハルカはギュッとチーを抱きしめた。チーを優しく撫でてくれたハルカはチーが眠たそうになると優しくベッドに運んでくれた。

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