第5話 探偵部の部活動報告書

部活動報告書には二つの意味がある。


自由ヶ谷高校は自由を第一とする校風な故に部活をするのも自由となる。


ただスマブラ部やFPS部等得体の知れない部活があるのも事実。


なので正式に部活動と認められるためにその部活が何をしたのかを紙に書いて教員に提出する。(形式上だが)これが一つ目の理由だ。


そしてその活動報告書は掲示板に貼られる。


これによってその部活動がどの様な活動をしてどんな成績を残したかを誰でも見ることができる。

これが二つ目の理由だ。


しかし、報告書には大した事も書いていないと知っているので生徒が見ることはない。


探偵部の金山香かなやま かおりを除けば……。


──────────────


探偵部の部室は旧棟の二階の一室にある。

前までは下で不良達が騒いでいたが、最近は不良がいなくなったのか静かだ。

これでゆっくり寝れる…と至福の一時を過ごしていたのは2年の菅道秋すがみち あきだ。


ただその平穏も長くは続かなかった。


「見て見て見て見て!!秋ちゃん先輩!!これ!新しいネタですよ!!」


勢いよくドアを開け、勢いよく喋り出したのは1年の金山香だ。


「うぇ〜香ちゃん?どしたの?なんか面白いことあった?」


最近入ってきた新入生の香は元気がいい。

いや、良すぎる。

私は良い寝場所が欲しくてこの部を設立したのに…。


でもまぁ…。かわいいからいいか!


「あれ?みくピンは?」


「えぇ?美久ちゃん?あー美久ちゃんならそこで本を読んでるよ〜。」


「うわぁ!気づかなかった!!みくピーーン!!!」


香が浜田美久はまた みくに飛びかかる。

それを華麗に避けて体勢を立て直し、すぐさま本を読み始めた。


美久もまた新しく入ってきた新入生だが、こっちは静かだ。

いや、静かすぎる。


まぁ私としてはこっちの方が寝れるから好きだけど。


香が美久に構ってもらおうと必死になっている所に声をかける。


「それで〜香ちゃん。ネタっていうのは?」


「あ!そうそう!これ!」


香が見せてきたのは、部活動報告書。


これは…心霊部。か。


「心霊部なんてなんか凄そうじゃない!?!?

ほら!特にこの黒いやつとか!!」


見せられたのは三人とその後ろに黒い物体が写った自撮りの写真。


これは合成じゃないか…?と思いながらも


その写真を見る。


「…先輩…この人達を…知っていますか…?」


美久が小さな声で聞いてくる。

小さなといっても香と比較したらだが。


「んーん。知らないよ。多分全員一年生じゃないかな?」


「…だとしたら…早すぎませんか…設立するのが…」


美久に言われて確かに。と思った。この探偵部新入生2人は決断が早かったからか入部も早かったが

今は部活動を何にするか決めかねていても全然おかしくない時期なのだ。


それなのに、設立とは。

あまりにも早すぎる。


そして心霊部の部室がどこかと考えた時。

私達の部屋の一階下の部屋が思い浮かんだ。

確か心霊部と書かれた看板がかかっていたな…。


でもあそこは不良とかヤンキーとか変なやつの巣窟になっていた筈…。


いや。


最近いなくなった。


何故か?


もしかしたら。


「これは久しぶりに…いや、初めてちゃんとした探偵部としての活動ができるかもしれないなぁ。」


───────────────


「えぇーっ!つまんないよー!」


「まぁ〜探偵なんてそんなかっこいい事しないよー。とりあえず張り込み!これが第1〜。」


木に隠れて窓から3人は心霊部の部室を見ていた。


「静かに…しましょう…バレたらおしまい…ですよ…」


「そりゃ隠れるのは得意だけどさぁー…。」


隠密行動が面倒臭くなってきたのか香の落ち着きがなくなってくる。


それもそうだ。今心霊部の部室には2人いる。

茶髪の子は右手でスマホをいじっている。左腕にはギプスをしていた。

黒髪の子はコーヒーを飲みながら読書をしている。

この状態が30分以上続いているのだ。


しかも今は午後7時。もう日も落ちて生徒は下校する頃だ。


流石に今日は解散かな…。

秋がそう言おうとした時。


「…あ!部室を出て行ったよ!!追いかけよう!!」


そこから心霊部に気づかれない様に尾行していった。


心霊部の2人は歩いて数10分の鳴山駅に行き電車に乗って5駅先の明日山駅に降りた。


それから歩いて数10分…


心霊部は暗い山道を登っていた。


「流石心霊部だぁ…!こんな辺な所にくるなんて!」


「でも…こんな所に…何の用が…」


付けてきた探偵部が話し合っていると

心霊部の2人が止まり静かに言った。


「…ここから先は危ないよ。もうストーカーするのはやめる方がいい。得体の知れない3人。」


ハッキリと聞こえた言葉に驚かせ、隠れるのをやめて草陰から出ていく。


「うえぇ〜。バレちゃったか〜。ごめんね。私達は探偵部。部活動の一貫で君達をつけてたんだよ。」


「探偵部ですか…。聞いた事ありませんね…」


「あはは!だって!秋ちゃん先輩?探偵部の知名度0〜!」


そんな事を話していると、辺りが異様に暗くなってきた。

怪異が出る合図だ。


「…まずいねぇ。こんな所で出るとは。」


木と木の間から暗い液体が漏れ出てくる。

それが溶けた人間の様な形になる。


「あ…あぁ…本当に…霊…が…」


美久が失神した。


「あはは…私ちょっと寝るね〜。」


秋も失神する。


「…え!これって私も失神しないといけないパターン!?」


香は失神しなかった。


「…ん。1人生きているようですね。」


「そこの君。失神した人を連れて山を降りる事ができるかい?」


「勿論!じゃあねー!心霊部さん!!」


香は失神した人を連れて山を降りた。


──────────────


部活動報告書は月に一回出す事になっている。


四月が終わるまで後10日以上ある。


「この事を書き留めねば…!!」


香は報告書に筆を走らせる。

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