第4話 浜泣トンネルではいチーズ!
学校生活。それは雨雲麗華が最も嫌いな時間である。何も彼女は勉強が嫌いな訳ではない。ただコーヒーを飲めないことが嫌なだけだ。酒やコーラと違いコーヒーは自分を落ち着かせてくれる。自分にとっての特効薬なのに。
そして3時間目の現代文の世界史の授業が終わった。
「あー!疲れたー!いやー坊主の授業は面白くないんだよねぇ!」
世界史の中村先生は教科書を読み上げるだけの授業として有名だ。あまりに抑揚なくお経のように読むのと禿げているので生徒からは坊主と呼ばれている。
「…麗華、見てくれ。」
見せられたのは一つの記事だった。それは
『巻坂駅に化け物か!?それを迎え撃つ幽霊少女は一体!?』
という物だった。
「これって私達が会った日の戦いじゃないか?」
「本当ですね。どこからこんな情報が…元はツイッター?…ツイートしたのは…『アニオタNaNa』…?本当に誰ですかね。」
化け物や幽霊少女などまぁ分からない単語が並ぶ中、リプ欄は「なな氏大丈夫でござるか?」「どしたん?話聞こか?」等で埋まっている。
「まぁ私達には興味無さそうだしいいんじゃないですかね。」
「それもそうだねぇ。」
「…ちょっと良いかしら?」
2人の話がひと段落した所で、クラス委員長の
「あなた達、この前の入部希望届に心霊部と書いていたけど学校としてはちゃんとした部活ではないのよ。でも新しく作りたいというならこの2枚の紙を出してね。」
「はーい。学級委員長お勤めご苦労様。」
ニッとドヤ顔した後に自分の席に戻っていった。きっと学級委員長と呼ばれて嬉しかったのだろう。
渡された紙は部活名、人数、名前、部長名(代表)、主な活動場所、活動時間、どんな活動をするかなどなど…面倒くさい事が苦手な凛にとっては拷問の様な紙だった。
「…。これは頼んだよ麗華部長。」
「なんで私が部長になってるんですか。嫌です。あなた負傷しているとはいえ片付けも何もやってないんですから、あなたが部長ですよ。」
「えぇー!それは困るなぁ…。じゃあ紫乃を部長にしよう。」
賛成という形で話は終わったが、問題なのは2枚目の方だった。
「部活動報告書…?」
自由ヶ谷高校は自由な高校である。故に自分で好きな部活を設立できる。そして漫画でよく聞く定員の5名に達していないと部活として認められないなんて事はなく、この活動報告書を月に一回出せば足りなくても正式に部活動として認められるのだ。
「うっわぁー。これは面倒だ。」
「まぁこれを書けば認められるだけ良いと思いましょうよ。」
「…そうだ。写真だ!怪異との写真を貼れば書く量も減るし活動をしている証拠にもなる!」
────────────
「という訳で来たねぇ!
「実に1週間ぶりの部活か。」
心霊部の三人は霊が出ると噂の浜泣トンネルに来ていた。霊と言われる物の本当の正体を三人は知っていたが。
「てかおめぇらなんで武器持ってきてねぇんだよ。」
「写真に日本刀が写ってたら銃刀法違反で事情聴取されるかもしれないだろう!
ていうか一昨日されたよ!
しかもあの
いやそういう問題か?と紫乃は考えた。
「実の所ここの怪異はそんな強くないと思います。あまり怪気を感じませんし。そこで紫乃さんにここの怪異を倒して貰おうという事です。言うならば実戦訓練です。」
グオワァァァァ
「…早速お出ましだよ。麗華!カメラを構えて!」
「…いきますよー。凛もっと入って。はい、チーズ。」
カシャ。そこにはトンネルに制服を着た3人と溶けたスライムの様な怪異がばっちり写っていた。
「よっしゃ!早速ぶっ飛ばすぜぇ!」
紫乃が構える。腰を落とし、拳を握る。
「怪異には二つの弱点があります。それは人間と同じで、脳と心臓です。
怪裂刀があればそれを繋ぐ『首』を斬るのが一番ですが、紫乃さんはどっちかを破壊して下さい。」
「おう!暗殺術と同じって事だな!」
そう言うなり紫乃は怪異に向かっていった。
怪異の覆い被さる攻撃をかわして背後に回るそして槍のようなパンチで胸を突き破り黒い心臓の様な物を取り、潰した。
怪異が溶ける様に消滅する。
「ふぅ…お。あと2、3体って所か。この前までは何も出来なかったが、お前らに触れる今!私には勝利しかないぜぇぇ!!」
その様子を見て2人はやべぇ奴を部長にしてしまったのかもしれないと思っていた。
───────────
「小崎先生。どうしましたか?」
学年主任で凛のクラスの担任で現代文を教えている小崎に呼ばれたのは世界史の坊主、中村だった。
「いや…入部希望届を見てたんですけどね。…うちのクラスに心霊部というのが2人、中村先生のクラスに1人、計3人いるんですよ。」
「そうですね。でも確か部活動報告書などは出していましたよね?」
「問題はそれなんですよ。見てくださいこれ。」
そこには、この世の中の怪異についてという見出しから始まる胡散臭い霊の事について書かれた文章と3人と霊が写っている写真があった。
「これ中村先生から見てどう思います?」
「…ちゃんと文章書いているし、1人2人じゃないので良いと思いますけど、いやぁーしかし」
中村は少し笑いながら言う。
「最近の編集技術は凄いですなぁ。
この黒い幽霊。本物かと思いましたよ。」
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