第8話 自然界にない薬草
先日…18:24頃東京都美山市で地震が発生しました。震度3マグニチュード4と小さく消防隊によるとこの地震による被害者はいないとの事です……
「はぁ…被害者がいない…ねぇ。ここに寝たきりの奴がいるのによぉ」
紫乃はテレビを見た後、寝たきりの凛の事を考えため息を吐く。今は麗華が介護している。
ガチャ。ドアを開けて麗華が出てくる。
「ん…凛は」
麗華は力なく首を横にふる。
「だめですね…起きる気配が微塵もないです。」
というと紫乃の向かいの席に座った。
「じゃあ…昨日の霊文字の反動が凛を寝たきりにしてるのかよ?」
少し考えてから麗華が言う。
「…にしてもですよ。これは異常です。反動があるとしても一回くらい起きたっていい筈ですが…。」
現在、午前10:35。凛は戦いから12時間以上眠っているのだ。
「じゃあ凛の兄貴がいる威桜霊園に行くのも少し遅れそうだな…」
と言いながら机に置いてある日記をめくる。
「ん……お?」
昨日はそこまで見ることができていなかったが後ろのページの方に各怪異の情報が乗ってあった。
「麗華、これは使えるぞ!」
…そこには凛の兄が相対した怪異の情報が書かれていた。
そして昨日戦った天狗の情報も…
天狗
団扇の風圧で攻撃してくる。近距離戦に持ち込もうとすると防御体勢をとる。しかしそれはこの霊園の死者の魂を取り込んで3m程に巨大化する為の嘘の行動である。
「はぁ…これを先に読んでおけば私がやられる事もなかったんだがなぁ…」
苦笑しながら麗華と一緒に読み進めているとそこには驚きの情報が書かれてあった。
私は死者の魂だけを吸っていると思っていたが、倒した後に気付いた。
私の力も吸われている。
巨大化した時天狗は確か「また鬼の血が来た。」と話していた。もしかしたら天狗が巨大化する時に力を吸われるのかもしれない。
「…これじゃねぇか!?」
「なるほど…原因が見えましたね。」
日記は続く
一度吸われた力が戻ることはない。
言うなれば今は容器の水を吸われた状態である。
しかしその容器の水をまた満タンにする方法がある事を私は知っている。
─────────────
14:00頃、麗華と紫乃は柏樹神社に来ていた。
「ここでいいんだよな?」
「えぇ、確かにここが凛のお兄さんが書いていた場所です。」
2人は山の麓にある神社に来ていた。その名の通り柏の木が綺麗に生えた場所である。
この景色をずっと見ていたいと2人は願うがそんな事をしている場合ではないと思いとどまった。
「ま、そもそも用事があるのはここじゃあないしな。」
2人は神社に来たのではない。正確には神社の裏にある山…もっと言えばそこにある薬草をとりに来たのである。
歩道が整備されていない険しい山道を歩いていると急に開けた場所に出た。
「これが…薬草がある場所ですね。」
樹齢500年以上にもなる大きな木の元に生えていた。
自然界には存在しない色がある。白と黒だ。
しかしその木の下には黒い植物が生えてあった。
「うえぇ…毒々しいというかなんというか…」
「…私には神秘的に見えますね。」
それを採取する事は容易だったが。
「あぁ…やはりそれは許してくれませんでしたか。」
周りが暗くなる、怪異が現れる合図だ。
突然下から枝を伸ばし絡め取ろうとしてくる。
それを2人は難なくよけて木と距離をとる。
この攻撃はあの日記に書いてあった。
「来たか…
日記の情報によると枝から血を吸い取り自分の養分にするらしい。
そして本体は…木。
「神木を斬るわけにはいきませんので…紫乃さん。予定通り倒して下さい!」
「よっしゃ!カバー頼んだぜ!」
紫乃が神木に突っ込んでいく。
枝が紫乃を絡め取ろうとするがそれを麗華が技で倒していく。
「オラァァ!!」
紫乃の拳が樹木に入る。が、まだ倒せる様子はない。
連撃を喰らわすが相手は木。怯む様子はなかった。
「予定変更です。私があの大樹に傷をつけます。そこから攻撃して下さい。」
そして麗華が木を傷つける十字形の傷が何重にも着いた所で事件は起こった。
紫乃が枝の攻撃を防いでいたが、全ては防ぎきれなかった。
枝が麗華に飛んでくる。麗華は刀でガード出来たが。
刀が二つに折れた。
反撃の術を失った麗華に枝が集中する。
そして複数の枝が麗華を捉える。
しかしそこを紫乃は見逃さなかった。
「ハァァァァア!!!」
麗華が傷をつけた所に紫乃の拳が炸裂する。
麗華を捉えていた枝が地面に戻っていく。
周りも晴れてきた。
どうやら樹木子の脅威は去ったらしい。
「麗華!大丈夫か!?」
「えぇ…私は大丈夫です…。早く帰りましょう。凛が待っています。」
───────────────
まず、薬草をすり潰す。その後水600ccを加えて、中火で沸騰させる。沸騰したら、火を弱くして量が半分ぐらいになるまで煮詰める。
この工程を踏んだ後、霊の力を持つ者…。つまり幽霊少女の血を一滴垂らす。
これで回復薬が完成する。
その回復薬を凛の口から飲ませると…
ゆっくり目を開けた。
「凛!!」
「凛、大丈夫ですか?」
2人を見た後、凛は口を開く。
「あぁ…起きたのが夢の中じゃなくてよかったよ。ありがとう。」
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