第2話 鶫

 夜の帳が降りきった。

 明けぬ夜が無いように、暮れぬ日も無いのだ。


 ******


 彼らが駆るのはDrosselドロッセルという鳥の名を付けられた戦闘機だった。角ばったフレームに3翅のプロペラ、全金属製の翼を持つ。この戦争でも多くが使われては散っている。カレルが前の部隊で乗っていたのも同じ機種だった。


 激戦地となったこの国の東部では、墜ちたドロッセルの残骸たちが放置されたままになっており、黒焦げになったり、鼻先から地面に突き刺さって屹立している異様な光景を見ることができる。


 66飛行隊のドロッセルはまさに焼け焦げたような真っ黒に塗装されていた。ふつうは大地に紛れるための緑だとか、薄い青だとかに塗られるが、この部隊が紛れたいのは夜空の闇の中なのだった。


 カレルは司令に連れられて出撃を見ていた。6機のドロッセルがつぎつぎに駐機場から滑走路へ出ていく。カレルには、目の前の機体が自分が乗っていたものと同じとは到底思えなかった。色もそうだし、レーダーの針が目立つのもそうだが、声が違うのだ。


「今日は定期哨戒飛行だよ。ここから北へ進んだところに国境まで続く山岳地帯がある。前の戦争の時だけど、山間を縫って爆撃機が飛んできたことがあるんだ。そこまで行く」


 6機目のドロッセルのプロペラがギラリと投光器の光を反射した。カレルがその動きを目で追う様を司令は眺めていて、そうして夜が更けていった。

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