怪しい古本屋
口羽龍
怪しい古本屋
ここは都内の本屋。小さいものの、ある程度の人が来ている本屋だ。この本屋は村田夫妻が経営していて、2人で営業している。小さいけれど、アットホームな所が魅力だ。
と、その本屋にある男がやって来た。その男はサングラスをした男で、やや不良っぽい見た目だ。
「いらっしゃいませ」
妻のすみれは彼の姿を見ている。その男を知っているようだ。
「どうしたの?」
すみれは横を見た。そこには夫の譲二(じょうじ)がいる。その男を見ているすみれが気になったようだ。
「あのお客さん、いつも大量に買ってくのよ」
すみれはあの客に見覚えがあった。いつも大量に本を買っていく。時には、棚の本がほとんどなくなる事もある。利益が上がるのはいい事だ。すみれは温かい目で見ている。
「そうなんだ」
だが、譲二は不審に見ている。いくらなんでも、こんなに買うのはおかしい。裏で何かをしているんだろうかと思ってしまう。
「嬉しいと思わない?」
「う、嬉しいけど、なんでこんなに買うんだろうな」
譲二は戸惑っている。こんなに買って、本当に読んでいるんだろうか? いくらなんでも、こんなに短期間で読めないのに。明らかに不審だ。
「わからないよ」
「まさか、何か悪い事に使っているってのは?」
譲二は考えていた。どこかで高く売り飛ばして、利益を得ているんだろうか? だったら、やめてほしいな。
「そんな事、ないわよ」
だが、すみれは悪い事をしていないと思っていた。だが、これだけ多くの本を大量に購入するとなれば、そうかもしれない。
「でも、なんだか怪しいね」
「うーん・・・」
すみれは考え込んでしまった。一体、あの客は何をしているんだろう。近々、また来た時に聞きたいな。
その夜、譲二とすみれは居酒屋で飲んでいた。明日は本屋が休みだ。ゆっくり飲んで疲れを取ろう。居酒屋には何組かの人がいる。一部の人は泥酔して、眠っている。
「はぁ・・・」
譲二はビールをジョッキ2杯飲んで、ほろ酔いになっている。すみれはその様子をじっと見ている。
と、カウンター席では2人の若い女性が飲んでいる。譲二とすみれはその話に聞き耳している。
「知ってる? 最近、この近くに古本屋ができたんだって」
古本屋か。最後に古本屋に行ったのはいつだろう。古いけど、安いのがいいんだよな。それに、読まなくなった本を引き取ってくれる。
「そうなの?」
「本がすっごくきれいなんだって」
本がきれいなのか。あまりにもきれいだったら、うちの本屋が大打撃だろう。すみれは少し不安になった。
「ふーん。今度、行ってみようかな?」
「いいね。一緒に行こ?」
「うん」
2人はその話が気になった。明日は休みだ。その古本屋に行ってみようかな?
翌日、2人はその古本屋にやって来た。その古本屋はできて間もないようで、多くの人が来ている。このまま客が減らなかったら、うちの経営も厳しくなるんじゃないかと思った。
「ここがその古本屋か」
2人は古本屋に入った。古本屋は広くて、いろんな本や雑誌が並んでいる。
「いらっしゃいませ」
レジにいた若い女性がお辞儀をした。接客態度はいいようだが、この店自体はどうだろう。見てみたいな。
譲二は本棚を見た。確かにきれいだ。居酒屋で言ったとおりだ。それに、けっこう新しい。本当に古本なのかと錯覚してしまうほどだ。
「確かに高いな」
「うん。って、あれ?」
と、すみれは何かに気が付いた。このラベル、どこかで見た事がある。ひょっとして、本屋から買ってきたものをここで高く買っているんだろうか?
「どうしたの?」
「ここ、うちで売ってたものじゃない?」
私たちの書店で売っていたものによく似ている。すみれは譲二にその本を見せた。譲二は信じられない表情だ。まさかこんな事があるとは。
「どれどれ? えっ、本当だ!」
譲二は驚いた。まさか、ここで売っていたものがここで高く売られているとは。
「まさか、ここで買ったものを高く売ってる?」
「そんな・・・」
「あなた、見て!」
と、すみれがレジを指さした。そこにはよく来ている男がいる。その男はこの古本屋の関係者のようだ。
「あの男・・・」
譲二は驚いた。ここであの男を見かけるとは。まさか、大量の本を買っていたのは、この古本屋で売るためだった? ならば、そんなの絶対に許さない。
2人はレジにやって来た。男は2人がやってきた事を全く知らない。その間にも、2人は近づいてくる。
「ちょっとあなた!」
誰かの声に気付き、男は2人の方を向いた。そこには本屋の2人がいる。まさかここに来たとは。男は驚いた。
「えっ!?」
「私の所で買ったものをここで安く売ってたの?」
すみれは怒っている。買ったものを安く売るなんて、許さない。今すぐ返しなさい!
「そ、それは・・・」
男は戸惑っている。まさか、見つかるとは。
「そんなの、やめなさい!」
譲二は大声で起こった。男はおののいている。
「あっ、あっ・・・」
「やめろって言ってるんだ!」
と、男は土下座をした。ばれてしまった。購入した金よりも高く売って利益を上げようとしたのに。
「ご、ごめんなさい・・・」
男はいつの間にか泣いていた。2人は厳しい目でその様子を見ている。自分たちが売っている本を、こんな形で売らないでほしい。
怪しい古本屋 口羽龍 @ryo_kuchiba
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