第110話 シャークアタック&漁師アタック!

「どうじゃ? 苦しいじゃろう~? 知性もない下等で下劣なタコの化け物に責められる気分はどうじゃ~? 怯えながらも媚びを売る愛玩動物のような哀れな目つきがたまらんのぉっ!」


 刺客ジジイめ! 完全に上から目線の舐めた態度をとりやがって……ッ!


「勇者……いや、元勇者アンジェリカよ。わしの『妾』になれば、特別にお前だけは助けてやってもよいぞぉ~? どうする~?」


 馬鹿じゃねぇの? ほんと、ジジイはクズ野郎しかいねぇのな。


「だ、誰が……妾などになるかっ! ふざけるなっ!」


 そりゃそうだろうよ。

 こいつに、飯も食わせずに言うことを聞かせられるわけがないだろ。


「生意気な小娘がッ! なんだ、その反抗的な目つきは!? 哀れな顔をして命乞いをしろ! わしに服従し、わしの愛人になれ! 毎朝毎晩、尻を振って寵愛を懇願し、わしに奉仕しろ! わしに殺されないように、ご機嫌をうかがうんじゃあッ!」


「……この期に及んで、まだ私を弄ぼうと言うのか……っ! この私の命を懸けた忠義を仇で返した貴様らは、まだ私に忠義と隷属を求めるのかっ!?」


 まあ、アンジェの怒りは正当だよね。


「フン。所詮は、どこの馬の骨とも知れぬ下賤の輩か……このまま縛り上げて、全身の骨を砕いてやるわッ!」


 なにぃーッ!?


「やれェーッ! クラーケンッ! 下等なクズどもを捻り殺すんじゃあァーッ!」


 アンジェに振られると同時に、いきなり殺しに来ただとォーッ!?

 展開早くなーいッ!?


「アンジェ! この馬鹿たれがーッ! お前のせいで、ジジイが八つ当たりしてきたじゃねぇかッ!」

「人のせいにするなっ! 私は関係ないっ!」

「関係しかねぇだろうがッ! ホステスなら、もっとジジイを転がせ、ばかたれがッ!」


 クソの役にも立たん駄ホステスよッ!


「二人ともっ! まだ諦めるのは早いッス!」


 次の瞬間、マーガレットちゃんが、何かを刺客ジジイめがけて放ったッ!


「マーガレット殿が、なにか投げたのだっ!」

「なにっ!? あ、あれは……ッ!」


「「銛ぃぃぃーッ!?」」


 マーガレットちゃんが投擲したのは、クソデケェ銛だッ!


「ほっほほ。下等な蛮族が、何をしようというのかね?」


 しかし、空中をふわふわと浮遊する刺客ジジイに、余裕でよけられてしまう。


「お前に何かしようとして投げたんじゃあないッス……ッ!」

「俺っちが、『銛を刺す隙を作っていた』んでぃっ!」


 いつの間にか、銛を構えていたアルアルのおっさんが、クラーケンの目に銛を投げつけたッ!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 眼球を銛で刺し貫かれたクラーケンが、耳をつんざくような絶叫を上げる!

 アルアルのおっさんの攻撃が、かなり痛いみたいだッ!


「「ぎえええええええええええええええええええええええええええええええっ!」」


 だが、そのせいで触手の締め付けがキツくなるッ!


「このクソ漁師! 俺たちを苦しめてどーすんだッ!」

「余計なことをせずに、たすけてほしいのだーっ!」


 バカの行動は意味がわからん!

 刺客ジジイ、クラーケン、そしてバカ漁師と敵が多すぎるッ!


「二人とも、もう少し我慢してほしいッス! 今、触手をほどかせるッスッ!」


 マーガレットちゃんは言うと同時に、先端が燃えている銛をクラーケンの触手に目がけて投げつけたッ!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!」」 


 また締め付けられるッ!

 そんな! マーガレットちゃん、ぽれを裏切った……ってコト!?


「なにっ!? 触手が脱力したぞッ!」


 失意の涙がポロリするのと入れ違いで、俺の全身をキツく締め付けていたクラーケンの触手が緩んだッ!?


「なんじゃとッ!? 砲撃にすら耐えるクラーケンが、銛ごときで怯んだじゃとッ!?」


「クラーケンは吸盤の付け根を刺すと、痛がって獲物を放すんでぃっ!」


 なにもしてないくせに、アルアルのおっさんがイキって漁師豆知識を披露する。


「アルアル殿の先ほどのクラーケン退治の武勇伝は、本当だったのかっ!?」


 アルアルのおっさんの武勇伝の真意はともかく!


「かっこつけてないで、助けて! まだ触手に捕らわれているのッ!」

「そうなのだ! ぬるぬるしたままなのだああああああああああああああああっ!」


 まだ触手が脱力しただけで、依然絡めとられたままなのだがッ!?


「おりゃああああああああああああああああああああああああああああああーっ!」


 アルアルに気を取られている俺たちをよそに、マーガレットちゃんが刺客ジジイに、なぞの桶を投げつけたッ!?


「なんじゃこれはッ!? このわしに、なにをぶっかけたんじゃあッ!?」


 なぜか、血と臓物まみれになった刺客ジジイが激昂する。


「ぼえええ! くっせえええええええええええええええええええええええええッ!」


 吐くほど臭い!?

 ってことは、今の桶は……さっきの『人喰い鮫用の餌』ッ!?


「臭がってる場合じゃないッスよ……っ!」


 マーガレットちゃんが不敵に笑った次の瞬間!


 水面から、何かが勢いよく飛び出したッ!


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアクッ!」


 シャアークッ! 飛び出したのは、巨大鮫だァァァッ!


「なんじゃあッ!? 鮫じゃとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!?」


 刺客ジジイも驚いているが、俺も驚いた。


「また鮫ェーッ!? さっき、しばき倒したはずだろッ!?」

「さっきとは別ッス! 人喰い鮫は『二匹いる』ッス!」


 なにっ!?

 そういえば……昼寝する前に、アルアルのおっさんがなんか言ってたような……。


「てやんでい! これでトドメだァーッ!」


 勢いづくアルアルのおっさんが、巨大釣り竿を乱暴に振り回す。


「ジジイの一本釣りでいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーッ!」


 アルアルのおっさんが、釣り上げたジジイを人喰い鮫にぶつけたッ!


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアクッ!」


 獲物が目の前にやってくるなり、黒い目を獰猛に輝かせる人喰い鮫がナイフのように鋭い歯が無数に生えるデカい口を開けるッ!


「なにィーッ!? さ、鮫じゃとォォォーッ!?」


 次の瞬間!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 刺客ジジイが、人喰い鮫に下半身を丸かじりされたッ!


「ただの鮫じゃない……人喰い鮫でぃっ!」


 などと気の利いた台詞を吐いたアルアルのおっさんが再度、銛を投げたッ!


「な、なんだあれはーっ!? 銛の先端に、なぜか爆薬が括り付けられているぞーっ!?」


「爆薬だとッ!? ふざけんな! アンジェ、俺の盾になれッ!」

「お前こそ、私の盾になれーっ!」


 爆薬付きの物騒な銛が狙うのは……。


「や、やめろ……下賤な漁師! 高貴なわしに、汚らわしい銛など投げるなァーッ!」


 刺客ジジイだッ!


「しゃらくせぇ! 高貴だか、こんこんちきだか知らねぇが、パンドラの漁師舐めんなよォーッ!」


 銛が刺客ジジイに突き刺さった次の瞬間、妙な間が発生した。


「不発か……?」

「たすかったのだっ!」


 安堵した瞬間ッ!

 銛に括りつけられた爆薬が大爆発したァーッ!


「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」


 爆炎炸裂ッ! 刺客ジジイ大爆死ーッ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る