第46話 小さなスナック
俺はかつて魔王と呼ばれていたが、今は世界の果ての地の小さなスナックの雇われ店長だ。
「さあ、やってきました! やってきましたっ! やってきましたーっ! あなたと踊るワンナイトショウー! ごゆっくり、ご~ゆっくりお楽しみくださいませっ!」
そして、俺の宿敵である勇者は、そこで働く新人ホステスだ。
「新入りのピチピチギャルのアンジェちゃんが、心を込めて一曲歌いますっ!」
胸が苦しくなるような後悔、取り返しのつかない過去、決して戻れないあの日々、終わってしまった青春、涙まみれになった初恋――。
切なさの乱れうちに思わず大声を出して泣き喚いても、厳しすぎる人生に対して俺たちは何もできやしない。
だから今夜は、哀しい歌が聞きたいの。
そして、しっぽり涙酒――。
「それでは、聞いてください――愛しさと切なさとしょうもなさと~っ!」
そんな感じで、勇者アンジェリカこと、新人ホステス・アンジェが、蓄音機の音色に合わせて歌いだした。
歌は、ど下手だった。
「な~んか、アンジェってば……顔つきが変わったと思わへん?」
この小さなスナックのママであるロリエルフのメイが、料理を作りながら話しかけてくる。
「あいつは、戦いのなかで成長するタイプなんだよ」
「はあ? なんの戦いやねん?」
「人生と言う名の戦いさ」
人生という厳しい戦いで疲れた人々は、夜ごと酒場に集い、酒を酌み交わす……。
それぞれの人生の涙と笑いと夢と、そして……。
愛を語り合いながら――。
「今日もね、楽しくお届けしてまいりましたけどね。みなさんは、どうでございましたでしょうか? これも何かのご縁、素敵な出会いってことで胸にしまい込んで大事にしたいですよね」
ここは、世界の果ての小さなスナック。
「それでは、またお会いできることを楽しみにしています」
傷つき疲れた人が、最後に流れ着き、涙を希望に変える店――。
ってね。
第1部 第3章 勇者が仲間になりたそうに、こちらを見ている
完
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第1部完!
次は、2部!
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