ナナコちゃんは本屋を知らない【KAC2023「本屋」】

ロッコ

本屋を知らないナナコちゃんの次の一手

ナナコちゃんの家には本がたくさんありました。


けれども、ナナコちゃんは本屋さんのことをよく知らないのでした。


本屋さんについて、見たこともなければ聞いたこともない、というわけではありません。


本屋さんというものを、漫画やテレビでは見ています。


本屋さんが出てくる小説を読むこともあります。

たとえば、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』とか。

最近では、『チャリング・クロス街84番地』なんていう本も読みました。


ナナコちゃんが本屋さんのことをよく知らないというのは、つまり、本屋さんに行ったことがない、ということです。


ナナコちゃんの家には、ナナコちゃんが生まれた時から、たくさん本がありました。


ナナコちゃんのパパは本が大好きだったので、ナナコちゃんのためというわけでなく、ただ自分のためにたくさん本を買っていました。


パパは、ナナコちゃんのために本を買っているわけではないので、家にある本でナナコちゃんでも読める本は、ナナコちゃんが小さい頃にはほとんどありませんでした。


ナナコちゃんが成長するにつれて、少しずつ読める本が増えていきました。


それは、パパが次々と本を買っているということもありますが、もちろんナナコちゃん自身が成長することで、以前は読めなかった本が読めるようになって来たということです。


大きくなったナナコちゃんは、いろいろな本が読めるようになって、パパが本を増やすよりも早いスピードで、家にある本を読んでいるかもしれない、というほどになりました。


ナナコちゃんが早いか、パパが早いか、追いかけっこがはじまりました。


でも、それはあまり長く続きませんでした。


パパは、ナナコちゃんが、自分が買った本をどんどん読んでくれるようになったことを喜んでいたのですが……。


しかし、ナナコちゃんの家の本はもう増えません。


そうしていまナナコちゃんが考えているのは、「本を自分で書こうかな?」ということなのでした。




おしまい

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