指

髪

バッサリ髪を切った。

ヘアドネーションをしたくて腰より先まで髪を伸ばしていた。いい加減これ以上は伸びないと感じてバッサリ行った。

あの男は可愛い髪型が好きだろうか。

あの男は色気のある髪型が好きだろうか。

あの男は女らしい髪型が好きだろうか。

あの男はボーイッシュな髪型が好きだろうか。

あの男の好みがわからない。

私は結局、自分がしたい好きな髪型を選んだ。周りからは褒めてもらえた。少しだけ自信に繋がった。

美容室に行ってから一週間あの男と会う事はなかった。あんなにあの男の事を考えたのに。

久し振りに会ったあの男は私に会うなり「あはははは」と指をさして大笑いした。

「何で笑うの？」と聞いても、ずっと笑っている。

「いや、ふふふ、あはは、切ったなーと思って」

「切ったら笑うの？」

「いやいや、似合うなーと思って」

「今お世辞言いましたよね？」

「いや、似合います似合ってます。ふふふ、ははは、あはははは」

本当に失礼な男だ。でも気分は悪くない。

あの男の機嫌が直っていたし、何よりとても楽しそうに笑っていたから。

あの男は本当に楽しいと思った時しか笑わない。