KAC20232/お題:ぬいぐるみ/ 復讐の騎士とぬいぐるみ

 私こと、マリナ=姫路=ジャダルの記憶は多くの記憶にまみれて、自己の記憶は薄い。

 目の前にある赤茶色のティディベアーは祖父がくれたぬいぐるみだそうだ。

 このぬいぐるみは樹虫や樹獣と戦っている時、黒い感情の激流に飲まれ過ぎた際、胸の奥に光を伴って出てくる。そして、ティディベアーなのに何故か熊の毛皮を被った騎士の姿で現れる。


「何故、熊のぬいぐるみが熊の毛皮を被って現れるのでしょうか?」


 私は首を傾げて考えたが、答えが出ないので考えることを止めた。

 大切なことはこのぬいぐるみが私の意識をつなぎ止め、戦える事が重要だと認識する。そして、激流を抑える際、ぬいぐるみが振るう剣の軌跡は聖騎士が振るう破魔の儀式魔剣術だった事だ。

 正式な騎士の出自ではない私にとって、儀式魔剣術を知れる良い機会でもあった。

 私はもう一度、ティディベアーを見る。


「・・・このぬいぐるみは私を守りながら、教えてくれているのでしょうか?」


 ティディベアーの頭を一撫ですると、何故か最後の休憩した村で声をかけてきた女の子の顔が思い浮かび、嫌な気配がした。

 私は急ぎ寝巻から魔術礼装である赤いドレスを着こみ、手甲ガントレット胸部鎧ブレストアーマー具足甲グリーブを装着し、狼の頭が付いた毛皮のマントを羽織り、ティディベアーの頭をもう一度撫でる。

 私は傍らに置いおてあった復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの鎖に手をかけて、肩掛けにする。

 私は一通りの装備をし終えたら、同室のロレッタを起こさないように部屋の入り口へと向かった。扉を閉める時、ティディベアーを一瞥して、視線をきった。

 視線をきった私は村への移動手段を考えた。特に理由もなく、車等は出せないと思った私は修道院にある馬小屋へと向かっていった。


「樹虫、樹獣何でも良い・・・樹種が関わっているのならば、切り捨て、殲滅するだけです」


 私は殲滅宣言を呟き、馬の背に騎乗した。そして、馬の頭を最後の休憩地へ向け走らた。

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