第7話 猫探しの依頼

 しかし、黒いローブの男の件は、あきれるほどあっさり解決してしまったのです。

 次の日学校に行くと、教室では黒いローブの男が逮捕たいほされたらしいといううわさで持ちきりでした。ほっとすると同時に、なんだか不思議ふしぎな話でもありました。


 エーリが昼休みに保健室に行くと、思った通りカレンがいました。おたがい、話したい事は一緒です。マージは来客中らいきゃくちゅうでした。


「良かったわね、エーリ。ひとまずローブ男には警戒けいかいしなくて良くなったわね」


「でも、なんつみつかまったのかしらね。もし昨日のことだとしたら、私たちしか知らないはずなのに……」


「他にも何か悪いことをしていたのか、それとも……誰か見ていた人でもいたのかしら。ちなみに、マージ先生は?」


「お母さんは誰にも言ってないはずよ」


「そもそも、逮捕されたっていう話も本当なのかしら。朝の新聞には特に何もってなかったわ」


「どこまでが本当でどこまでが噂なのかわからないけれど……。学校が警察けいさつ不審者ふしんしゃ相談そうだんをしてたから、逮捕の情報じょうほうかんしては、直接警察から先生の誰かが聞いたみたい」


 エーリとカレンがあれやこれやとローブ男の話をしていると、午後の授業の始まりをげるチャイムがりました。マージと話が出来なくて残念ざんねんでしたが、二人はいそいでそれぞれの教室にもどります。

 エーリのクラスでもカレンのクラスでも、授業が始まる前に担任の先生が、黒いローブの男が捕まったことを生徒に伝えました。何の罪でかは知らされませんでしたが、逮捕は事実じじつのようです。

 エーリは腕輪の事とローブ男のことをモヤモヤと考えてしまって、今日は一日中、授業に身がはいらないのでした。




 放課後ほうかご、この日は委員会活動日かつどうびではありませんでしたが、エーリもカレンも保健室に行きました。

 もともとはマージが、エーリたちがふたたおそわれないように監視かんしする目的もくてきで保健室に呼んでいたのです。


 エーリとカレンが保健室にはいると、それに気づいたマージが言いました。


「二人ともちょうどいいところに! お茶を入れてもらえるかしら」


 彼女たちが返事をしてキッチンに向かおうとすると、


「もう失礼しますから、お茶はいいですよ」


 と、今までマージと話をしていたと思われるおばあさんが言いました。


「それでは、ねこの件、よろしくお願いしますね」


 そのおばあさんはそう言って立ち上がると、アトリエから出て行きました。


 マージはおばあさんを見送みおくってから、エーリとカレンに言いました。


「猫さがしの依頼いらいよ。腕輪の問題がなくなったわけではないけど、ローブ男の件はとりあえず解決かいけつしたし、気持ちを切りえるつもりで、あなたたち、挑戦ちょうせんしてみない?」


 二人は顔をパッとかがやかせました。ひさしぶりの魔女見習みならいらしい体験たいけんです。

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