現実はそんなにいいもんじゃない

最近バイトを優先しちゃって中々雪兎と遊ぶ時間が減ってしまったけど

今日は久々に映画を観に行って、一緒にファミレスで食事中。


「樹さぁ、なんでそんなに兄貴欲しいわけ?」


僕があまりにも兄弟ほし~って言い続けてるからか、今まで

雪兎にはスルーされてたのに珍しく質問されたよ。


「え~、いろいろ楽しそうじゃん。」


「何が楽しいんだか…

 大体、テレビのチャンネル争いにトイレの順番

 朝の支度だって兄貴優先。風呂の順番だって大変だったんだぞ。」


「そういうの、経験したことないから一度やってみたいんだって。」


「俺からしたら、一人っ子なんて自分の好きなように出来るんだから

 そっちの方が羨ましいけどな。」


「ん~…

 両親が仕事遅かったり、出張でいなかったり。

 誰もいない部屋に1人でいるのももう飽きたんだよね。

 人の気配のない家って、結構不気味だよ?

 まだ、マンションとかなら生活音とかあったかも。だけどさ

 家なんか一軒家だし、近所までそこそこ距離あるし。」


「ふ~ん…  そんなもんかね?」


「そうそう。今はもう平気だけど小学生頃は結構怖かったよ~。」


「でも、今更兄貴貸し出しても

 接客業だから土日は仕事で、家にいるの平日だし夜も結構遅いから

 樹と遊んでる時間ないんじゃね?

 というか、ろくに顔も会わせないんじゃないかと思うけど」


「それでも!! 帰ってくるのを待つ愉しみとかさ。

 いろいろあるじゃん?

 誰かに今日あった事話したりさ。」


「……あのさ。

 普通、兄貴はそういう話聞いてくんないからな。 お前、兄弟に夢見過ぎ。」


ジト目でこっちを見て、呆れたように溜息を吐かなくてもいいと思うんだけど。


「それでも…… 兄弟欲しかったんだよ!

 雪兎に迷惑かけてるわけじゃないんだからいいじゃん。」


「はいはい。 どうせ一緒に生活したら幻滅するだけだと思うけどね。

 兄貴が1か月研修でそっち方面行くらしいよ。一緒に住もうって言ってみたら?」


「そうなの?

 じゃあ、バイトの時に聞いてみようかな~。」


「そういえば今、一人暮らしだったっけ?」


「そうそう。

 どっちも長期出張中。高校生になったから大丈夫よね。

 とか言いながら年末年始くらいしか帰ってこないよ。」


「俺はそっちの方が羨ましいけどね。

 好き勝手出来て。」


「それこそ、雪兎だってないものねだりじゃん。

 好き勝手出来るけど、その分全部自分でしなきゃ何にもないんだよ?

 食事の準備に買い物、洗濯に掃除、ゴミ出しだってやんなきゃ。」


「そっか、意外と大変なんだな。」


「もうだいぶ慣れたけどね。 誰もいない家に帰るのも。」


そんな僕に、雪兎は気を遣ってくれたのか結構遅い時間まで一緒に

ファミレスでグダグダやってた。

でも、楽しい時間が長いほど

一人家で過ごす時間がさみしくなったりするんだよね。


子どものころ泊った雪兎の家は賑やかだった。

それが僕にとって、ずっとキラキラした想い出になってる。


遠慮なくじゃれあってる雪兎たちを見て

どうしても羨ましくて。

でも…… どうにもならないことがあるのは知ってるけど

やっぱり兄弟欲しかったな。。。




 

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