第6話 マイ-02.初戦
「さぁ、遂にこの時がやって参りました! 靡く美しき銀髪、流れるような剣技。煌めく銀色の
『きゃああああ! マイ様ぁああああ』
『今日も素敵よ~~~』
『結婚してぇええええ!』
マイの可憐な姿は女性達の憧れの的として、世界的にも有名な存在。会場に今までになく大きな歓声があがり、実況のケモ耳っ娘の声にも熱が入る。
「そして、対戦相手は今回初出場。黒フードに隠れた素顔。少女は外套の下へ何を隠しているのか? サターナ国代表、デスパレッド!」
黒フードの下に血の気のない
「
試合開始の鐘と共に、呼吸をするように剣を抜くマイ。黒フードを脱ぎ捨てた少女は、幼い顔に似つかわしくない真っ赤な
「デスパレッドと言ったな。どんな相手だろうと、手は抜かないよ。全力でかかって来ると言い」
「キシシシシシ……」
歯を見せて嗤う少女は、片膝を立てた状態で両手を地へ置き、独特の構えをする。そして、地面を蹴った瞬間、高く飛び上がる。
激しい金属音が舞台上に響き渡った後、一旦距離を取り、再び突進。ニ、三、剣戟を交えた後、少女の手に持つ武器が何なのか、ようやく観客にも見えるようになった。
「二本の
「キシシシシ……タダノ曲刀ジャナイヨ」
二本の曲刀を高速で旋回させる少女。曲刀が撓り、空気を切る音が聞こえる。素早く背後へ廻り込んだデスパレッドは、後ろからマイを斬り捨てようとするが……。
「おーーっと、マイ選手。デスパレッド選手の背後からの攻撃に素早く反応し、デスパレッド選手を横に斬り払ったぁああああ! 勢いのあまり壁へ激突してしまったデスパレッド選手、果たして無事なのか?」
「キシシシシ……サスガダネ!」
起き上がるデスパレッド。先程より更に前傾姿勢となった少女は外套を脱ぎ捨てる。紅いレオタードのような格好となった少女は更にギアをあげる。
前後左右より放たれる剣戟を刀身で受け流すマイ、返しに腕、脚に傷がつくも、デスパレッドは諸共しない。やがて、マイが横へ凪いだ剣に一本の曲刀が宙を舞い、折れた刀身が舞台上に突き刺さる。デスパレッドは右手でマイが放つ剣の刀身を握り、掌から滲む鮮血をそのままに、左の曲刀を一閃する。
「ツカマエタ!」
マイの左太腿に初めて傷がつく。しかし、
「ココカラダヨ……」
「君は私には勝てな……何?」
この時、マイは決して油断していた訳ではなかった。デスパレットは、先程までと同じ動き。むしろ曲刀も片手一本になっていた。しかし、横へ一閃した剣戟を躱した少女、今度は確実にマイの背中を斬り捨てたのだ!
「ああーーっと、満身創痍に見えたデスパレット選手、起死回生の攻撃だぁ~~! マイ選手の美しい背中に傷がぁ~~~!」
「マダマダ!」
「どうなってる?」
少女の連撃を剣で払うも、だんだんと後方へと下がっていくマイ。やがて、右脚を斬られたところで後方へ飛んで距離を取ったマイは、相手の能力の本質を見抜く。
「成程。その曲刀、魔族が持つ
「キシシシシ……ソウダヨ」
マイは僅かに自身の動きが遅くなっている事に気づいたのだ。そう、相手が速くなっていたのではなく、マイ自身が遅くなっていた。一般客はその僅かな速度の差には恐らく気づいていないだろう。しかし、達人の域に達しているマイは、その違和感に気づき、曲刀が僅かに放つ闇の魔力を感知したのである。
「相手に悟られないよう魔力を隠して攻撃している。中々見事なものだな」
「キシシシシ……ホメテモナニモデナイヨ」
隠す必要が無くなったのか、仕留めるつもりなのか、デスパレットが持つ曲刀の刀身が紫色に妖しく光り始める。次の瞬間、全身を押し潰されるような感覚を覚え、思わず片膝をつくマイ。
「オワリダヨ」
「どうかな?」
「キシシシシ……ソノ状態デドウスルノ?」
「サザナミ剣術――
デスパレットがマイを斬り捨てようと闇の魔力を籠め、曲刀を横に薙ぐとほぼ同時、マイは両手で持った剣を上から真っ直ぐ振り下ろしていた。一瞬、二人の居た場所が白く発光したかと思うと、デスパレッドが居る側の後方、会場の壁に衝撃が走る。須臾の間に壁へと激突した少女は、剣戟によりレオタードを真っ二つにされ、そのまま気を失った。
(動きを封じたところで、私に死角はないよ)
「勝者――マイ・ストラーヴァ!」
『マイ様ぁああああああ!』
『お見事です』
『きゃあああああああ!』
『結婚してぇえええええ!』
こうして大歓声の中、マイの初戦は幕を閉じる。
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