第5話 マイ-01.控室にて
「
「いえいえ、むしろ恥ずかしいのは昔と全然変わってないですから!」
「そうか、そのようには全然見えなかったがな」
マイにはモニター越しに映るミナモの姿は、敵を翻弄し、戦場で可憐に舞う
マイの従者である治癒部隊のメイド達もミナモの勝利を称賛する中、メイド長であり、本戦出場者でもある黒髪のメイドがミナモを手招きする。
「ミナモ様、腕の怪我を治癒しますので、こちらへ」
「え? クロエさん? 私怪我なんかしていないで……痛っ!」
クロエと呼ばれたメイドはモニターを通じ、闘いの一部始終を
クロエがミナモの右腕についた痣へ手を翳す。温かな光に包まれたかと思うと、みるみる痣が消えていく。己の魔力を光属性の力へ変換する治癒魔法はメイド長である彼女の得意とする魔法だった。
「ありがとうございますクロエさん」
「いえ、これも仕事ですから」
そのまま黙って会釈したクロエは立ち上がり、他のメイド達に何やら指示を出していた。
「クロエの眼は
「ありがとうございます、マイ様」
優しく微笑むマイにミナモがお辞儀をする。
宮廷騎士団長 騎士 マイ・ストラーヴァ
マイの従者 メイド クロエ・ブリンダ
サザナミの巫女 踊り手 ミナモ・ミカガミ
騎士団員の新星 騎士 アルバ・レイ
疾風の猫娘
以上、五名となっている。
尚、本大会の優勝候補であり、リーダー的役割を果たしているマイの試合は午後からのスケジュールとなっているため、まだ時間がある。ちょうどモニターには同じサザナミ国代表として出場している
「お相手は確か……ヴィーナス国の魔導師、ローグでしたね。火球も氷刃も当たらなければ意味を成さないもの」
「凄いですね、ミミィちゃんが爪に纏っているの……魔力じゃないですよね?」
普段は愛くるしいムードメーカーのようなキャラクターであるミミィだが、戦闘時は獲物を狙う獣のように敵を追い詰めていく。メイドのクロエが戦況を分析する中、ミナモはミミィの鋭く伸びた爪が白い光に包まれている事に気づき、質問する。
「あれは
「マイ様は闘気も魔力も扱えるので凄いですよね。私は未だに闘気の扱いに慣れていないので……」
「ミナモは今のスタイルを極めるといい。後は
「極限状態……ですか?」
「お、そろそろ終わりそうだぞ?」
ミナモの質問に答えられる事なく、モニターごしにあがる歓声へ目を向ける一同。ちょうど魔導師ローグの身につけているローブが引き裂かれ、腹部と胸元の一部が露わになったところだった。自身の攻撃すら当たらず、怒りの形相となった魔導師は、杖を掲げ、大掛かりな魔法の詠唱を始めていた。
ローグの
「喰らいなさい! 火属性魔法――フレイムバーストよ!」
舞台上を覆い尽くす程の巨大な火球が猫娘を呑み込まんと襲い掛かる。この大きさだとむしろ回避する事は不可能であろう。火球が猫娘を呑み込み、塵と化そうと迫った瞬間、猫娘は両眼をカッと見開いた!
「甘いにゃーー!」
巨大な火球にミミィの姿は見えなくなり、会場を覆う結界へとぶつかり爆発を起こす。モニターごしの映像も煙に包まれ、会場がどうなったのか分からない。実況のケモ耳っ娘が会場を煽る中、やがて煙が晴れた時、セーラービキニを焦がし、なだらかな片方の果実を少し見せた状態で、猫娘はほぼ無傷で立っていた。
「凄い……」
「ミナモ、あれが闘気の使い方だよ」
地面を蹴ったミミィは一瞬でローグとの距離をつめ、そのまま押し倒した魔導師の喉元へ鋭い爪先を突きつけた。咽喉を鳴らした魔導師は、鬼気迫る獣の形相に戦意を喪失し……。
「……参り……ましたわ」
「勝ったにゃああああ!」
「勝者――ミミィ!」
実況のケモ耳娘が勝ち名乗りをあげ、会場から歓声が沸き上がる。
ミミィ勝利の瞬間だった。このあと、もう一人午前中の試合にスタンバイしていた宮廷騎士団の若き新星、アルバも見事勝利し、サザナミ国のメンバーは順当に一回戦を突破していく。
そして、いよいよ前回準優勝、今大会の優勝候補筆頭、マイの初戦が回って来るのである。
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