KAC20231 古本屋にて魔術書、とある欲望は廻り始める
@kodukikentarou
第1話
古本屋にて魔術書、とある欲望は廻り始める
夏の日差しを恨みたくなるほどの暑さ。
セミは盛大に一瞬の生命を謳歌している。
そのセミが、熱波を絡めながら教室に入ってくる。
女子は勿論、情けない事に男子迄、パ二クる。
それを傍目に俺は教諭から
「小説本を読め」
と小突かれた。
現国が酷い成績だから言われたのであって。
そんな事を言われても、俺には俺のライフワークと言うものがある。
学校から帰り、飯食って、風呂入って、課題を適当にこなし、夜、近くのコンビニで友人達と駄弁り、眠たくなったら帰って布団に潜って、さぁ寝よう、そして朝が来れば、学校の門を潜り、早弁したくなったら・・・何て言うライフワークである。
本ねぇ・・・。
生まれてこの方小難しい本、基、純文学なんて言ったら尚更だ、読んだ事がない。
マンガはある程度読む。
でも・・・小説ねぇ。
俺は夏の空を見上げながら、否、太陽を睨みながらつい
「あっちいなぁ」
などと不意に口に出す。
ふと目に留まったのは古めかしい、いう人がいれば、懐かしい自販機。
コーラ、だな。
俺は財布を取り出し
「ええっと、180円と・・・」
不意に聞こえてくるのは、俺と同年代であろう少女の声。
「も・・・もし、あちきにもコーラを・・・」
何か、空耳で切り抜けたくなる。
それも酷か、酷・コーラなんちゃって。
俺はやれやれと360円突っ込んでコーラを2本取り
「ほいよ。たく、俺だって貧乏学生なんだからな」
その少女はコーラを一気飲み。
ドン引き。
コーラ一気って。
しかしこんなヨーロッパ系の外国の少女がなぜこんな田舎にいるのだろうか?
不思議である。
余計な事に首を突っ込んでややこしい事になるのも嫌なので、あえて感想のみ。
「この街に本屋さんない?」
本屋?
「ああ、3件あるよ、数内って所に数内書店ってのと、日栄に夕陽書店、後は・・・」
俺は口を紡ぐ。
あそこだけは異様なのだ。
本、古本で普通の本も売っているが、噂では魔術書なんかも置いてあるなんて言う噂が独り歩きしている。
外見ではそんな感じはしない。
店員さんだって、若い女の子がレジ打ちしているし何故そんな噂が立っているのであろうか。
とある事件が噂の根源だ。
街の風上にある、山から火の手が上がった。
風下に一気に流れ近で、街を捨てるしかない、住民達はそう腹を括ったそうである。
だがそこに、1人の少女。
燃え盛る炎の中に入っていき、ものの30分で火という火を消した。
街の人々は感謝した、と同時に畏怖する対象にもなった。
その時、少女の腕に抱かれていたのは一冊の本。
教えなくていい、直感でそう告げる。
「井筒尚江、本名、ミューフラン・ボンフラーズ。月詠高校2年、貴方と同学年、でしょう?政道克己君?」
隠し通せないな。
俺は自販機のある店にドタバタ上がる。
そう、ここが目指していた古本屋。
「フラン!客人だぞ!」
下着一丁で扇風機に当たっていたフランが
「かつみんが相手して。暑くてこっちはばて気味だから」
あのな。
会った当初からこんな性格というのは覚悟していた。
だからと言ってぐーたらを許さない。
飴と鞭。
「手伝ってくれたら、高級チョコアイス食わしてやる」
目を煌めかせて立ち上がり空中に五行を描き
「来て、私の愛読書」
蒼い表紙にルーン文字。
フランはそれを広げるや否や
「山を切り裂きて谷を創るは何者ぞ!」
問い掛け系の、クイズブック。
真空の刃が飛ぶ。
それを連発する。
正解が出る迄撃ち続ける事ができるのだ。
「水鏡は波紋を広げるのみ。来い、書き足しの書」
目の前に本が現れそれを手に取るや否や
「水鏡、之を放て!」
と、とある古本の一冊の一部分を刺すと
黒い剣が少女を襲う。
俺の本は真似る、可能な限り。
「で、このルーン魔導書が集まると奇跡が起きると」
ばーちゃん、肝心な事を言わずに逝っちゃったな。
聞いていたとしても集める旅には出ないだろう。
ここであまり聞きたくなかった事が一つ。
魔導書はある一周期を迎えると、磁石の様に引き寄せられて来るそうである。
持ち主の意思、意思でなくとも。
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