エピローグ2 また恋の続きを始めよう
第52話 これは吸血鬼のメアリーが何度も同じ人間に恋をする物語。
何百年後。
メアリーはまた一人、待っていた。
静香も静江と同じく吸血鬼になることを望まず、人間として生きることを選んだ。
静香も死ぬ間際、また自分を見つけて夫婦になりたいと言っていた。
その約束を守るため、メアリーは今日も一人静香の生まれ変わりに出会うのを待っていた。
「健気だな~メアリーは。本当にずっと静香の生まれ変わりを待っているんだね」
「からかうな天音。我は真剣に静香の生まれ変わりに出会うのを待っているんだ。邪魔をするな」
健気に静香の生まれ変わりを待つメアリーを茶化す天音。
今回は吸血鬼仲間の天音がいるから、前よりかは退屈しなかった。
だが天音は昔からウザかったので時々イライラすることもあった。
「私たちって本当に歳も取らないし死なないよね~」
「そうだな。死んでも生き返るからな」
死ねないことをぼやく二人。
長くても百年生きたら死んでしまう人間と永遠を生きる吸血鬼。
同じ時を生きているように見えて、人間と吸血鬼の時の流れ方は明らかに違う。
「静香も帆波も月も死んで……やっぱり悲しかったな」
「そうだな。友達が死ぬのは悲しいな。でも心のどこかでは生き返ることを望んでいた我もいた」
「うんうん、分かる分かる。また五人で遊びたいもん」
一度死んだら、生き返ることはない。
それが人間という生き物だ。
だからこそ、人間の生は輝き美しいのかもしれない。
天音の言うとおり、帆波と月は初めてできた人間の友達だが死んだ時は静香と同じぐらい悲しかった。
三人とも歳を取り、高校生の頃とは全く別人だったがそれでもメアリーたちは友達だった。
歳を取る人間と歳を取らない吸血鬼のグループは傍から見れば異色のグループだっただろう。
「でも我はあいつらと過ごした数十年は最高に幸せだった。天音もそうだろう」
「もちろんだよ。五人で過ごしたあの数十年は最高に楽しかった」
メアリーと天音は昔の思い出を思い出し、感傷に浸る。
数百年前の数十年間、静香たちと過ごしたあの数十年は、静江と過ごした五年間と同じぐらい最高な時だった。
「でもメアリー。また静香の生まれ変わりに会える保証もないのによく待てるよね~。前回はたまたま静江の生まれ変わりの静香と出会えたから良かったものの」
「なーに、会えるさ。だって我と静香は赤い糸で繋がっているのだからな」
「凄く痛い発言っ」
天音の言うとおり、静香の生まれ変わりと出会える保証なんてどこにもない。
だが、メアリーは確信していた。
静江の生まれ変わりの静香に出会えたのだ。なら静香の生まれ変わりにも出会うことができると。
そんな痛い発言をしているメアリーにドン引きする天音。
こんなくだらないことしか話さないが吸血鬼の友達を作って良かったとメアリーは思った。
あの頃は吸血鬼の友達はいらないと思っていた自分に今の現状を伝えたら絶対に信じないだろう。
「……あれは」
「どうしたのメアリー」
メアリーはある人物を見つけて走ってその距離を埋める。
天音がメアリーに話しかけるが、それを無視するほどメアリーの心は高揚していた。
あれは間違いない。
長い黒髪。
幼くも凛とした顔立ち。
それに雰囲気が静香であり静江だ。
たくさん静香に伝えたいことはある。
でも最初会った時は絶対、言うと決めている言葉がある。
「ちょっと、君」
「えっ……私ですか」
メアリーは静香似の高校生を呼び止める。
いきなり金髪長身の赤いドレスを着た吸血鬼に呼び止められたのだ。
その高校生はとても困惑している。
「また会うことができた。君を迎えにきたよ静香。また恋の続きを始めよう」
メアリーは何百年間伝えたいのに伝えられなかった言葉を伝える。
人間は百年で死に、吸血鬼は永遠の時と生きる。
これは人間と吸血鬼の恋の物語。
これは吸血鬼のメアリーが何度も同じ人間に恋をする物語。
吸血鬼の三百年恋 黒姫百合 @kurohimeyuri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます